受贈図書 戦争と萬葉集研究会編『戦争と萬葉集』創刊号

小松靖彦氏(青山学院大学教授)よりいただきました。

2018年12月19日発行
『戦争と萬葉集』創刊号
戦争と萬葉集研究会編(編集人・小松靖彦)
非売品
A5判・並製・142頁
ISSN:2434-5318


編集・発行
戦争と萬葉集研究会
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25
青山学院大学文学部 日本文学科 小松靖彦研究室内


【目次】
《ますらを》の内在化―『萬葉集』の「ますらを」と戦争短歌におけるその受容〈戦争と萬葉集〉―……小松靖彦
日本統治下の台湾における〈万葉集〉教育と〈台湾万葉集〉の誕生―呉建堂と伴走者としての犬養孝―……河路由佳
日本統治下台湾の国語教科書における『万葉集』の記述について―昭和十二年以降の第四期並びに第五期教科書を中心に―……孫世偉
戦時下『少女倶楽部』の短歌欄―少女たちの「みたみわれ」―……高橋美織
菊池寛と「海ゆかば」―同名の戯曲を中心に―……内村文紀
源氏物語と不敬―劇上演禁止事件と国定教科書論争を中心に―……長尾崇

資料紹介
伊号第二九潜水艦艦内誌「不朽」について……東谷櫻子
菊池寛「話の屑籠」における『萬葉集』関連表現……内村文紀
旧外地国語教科書における『萬葉集』および日本古典文学……佐藤織衣

聞き書き報告
乙女たちの「海ゆかば」(顧みはせじ)……高橋憲子

戦争と萬葉集研究会活動報告……小松靖彦


研究誌『戦争と萬葉集』創刊に当たって
 日中戦争・太平洋戦争下、『萬葉集』を中心に、古典文学作品は大日本帝国政府と陸海軍によって戦意高揚のために政治利用された。しかし、それだけではなく、『萬葉集』などの古典文学作品は、戦争下の「国民」の「好戦」的表現の典拠として積極的に享受されると同時に、戦争を運命として受け容れざるをえぬ苦しみと諦めの「厭戦」的心情を託すものとなっていた。
 太平洋戦争敗戦後、日本古典文学研究は、戦争下の古典文学作品受容の歴史的な検討を十分に行わぬままに再出発した。敗戦から七十三年、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領の終結から六十六年、沖縄復帰から四十六年を経た今日、戦争を直接体験した人々が少なくなり、戦争下の貴重な資料も未調査のまま散逸しつつある。しかも、二〇一〇年代に入り、経済的には自国優先主義が、政治的感情としてはナショナリズムが世界的に高まり、人々の間で過去の戦争を理性的に捉える目が失われつつある。
 「戦争下における『萬葉集』を中心とする古典文学作品受容の全体像をあくまでも学問的立場から明らかにし、戦争と文学がいかなる関係にあるかを究明することが、専攻分野を超えて日本文学研究者に今まさに求められている。本誌はその責務を果たすべく創刊された。(表紙の図版=将兵が戦場に携行することの多かった新潮文庫版『萬葉集』)