受贈図書
戦争と萬葉集研究会編『戦争と萬葉集』第2号

小松靖彦氏(青山学院大学教授)よりいただきました。

2020年2月27日発行
『戦争と萬葉集』第2号
戦争と萬葉集研究会編(編集人・小松靖彦)
非売品
A5判・並製・124頁
ISSN:2434-5318


編集・発行
戦争と萬葉集研究会

ご案内
『戦争と萬葉集』第2号御入用の方は、郵送用のスマートレター(180円)を封筒に入れてお送りください。
本体は無料。
送り先:150-8366 渋谷区渋谷4-4-25 青山学院大学文学部日本文学科小松靖彦研究室内 戦争と萬葉集研究会
https://twitter.com/ScriptOgawa/status/1233329015009628161


目次

平和な時代に振り返って鏡をのぞき込むと、後ろに小さく北園克衛が見える……ジョン・ソルト(詩人、ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所研究員)
記憶を歴史に記録する……栗原俊雄(毎日新聞社学芸部記者)
沖縄において歌唱された「海ゆかば」をめぐって……柳井貴士(蘭州大学外国語学院日本語学科講師)
佐佐木信綱の「新た世」の歴史観—戦争期と戦後を繋いだ論理 付、「日本叢書」一覧—……小松靖彦(青山学院大学教授)

資料紹介
「特攻百首」について……内村文紀(青山学院大学大学院博士後期課程)

戦争と萬葉集研究会活動報告……小松靖彦


研究誌『戦争と萬葉集』創刊に当たって(創刊号より)

 日中戦争・太平洋戦争下、『萬葉集』を中心に、古典文学作品は大日本帝国政府と陸海軍によって戦意高揚のために政治利用された。しかし、それだけではなく、『萬葉集』などの古典文学作品は、戦争下の「国民」の「好戦」的表現の典拠として積極的に享受されると同時に、戦争を運命として受け容れざるをえぬ苦しみと諦めの「厭戦」的心情を託すものとなっていた。
 太平洋戦争敗戦後、日本古典文学研究は、戦争下の古典文学作品受容の歴史的な検討を十分に行わぬままに再出発した。敗戦から七十三年、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領の終結から六十六年、沖縄復帰から四十六年を経た今日、戦争を直接体験した人々が少なくなり、戦争下の貴重な資料も未調査のまま散逸しつつある。しかも、二〇一〇年代に入り、経済的には自国優先主義が、政治的感情としてはナショナリズムが世界的に高まり、人々の間で過去の戦争を理性的に捉える目が失われつつある。
 戦争下における『萬葉集』を中心とする古典文学作品受容の全体像をあくまでも学問的立場から明らかにし、戦争と文学がいかなる関係にあるかを究明することが、専攻分野を超えて日本文学研究者に今まさに求められている。本誌はその責務を果たすべく創刊された。
(表紙の図版=戦争下・敗戦直後の北園克衛に関わる本。左=防人歌を取り上げた「愛国詩」などの評論を収めた『郷土詩論』(昭森社、一九四四・九)、中=北園の「愛国詩」を掲載する日本文学報国会編『詩集 大東亜』(河出書房、一九四四・一〇)、右=敗戦直後の作品を掲載する『天の繭』(天明社、一九四六・三))