受贈図書 
戦争と萬葉集研究会編『戦争と萬葉集』第3号

小松靖彦氏(青山学院大学教授)よりいただきました。

2021年2月22日発行
『戦争と萬葉集』第3号
戦争と萬葉集研究会編(編集人・小松靖彦)
非売品
A5判・並製・214頁
ISSN:2434-5318

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目次

土岐善麿と『萬葉集』――『作者別萬葉短歌全集』(一九一五)を起点として――……河路由佳
戦中戦後の窪田空穂――『槻の木』から――……御手洗靖大
石川淳「江戸人の発想法について」論――萬葉に対峙する〈江戸〉——……帆苅基生
雑誌『文化展望』にみる「過去への反逆」の拒絶――太宰治、坂口安吾、齋藤史らの寄稿における戦中・戦後の切断と連続――……橋本あゆみ
作家たちの戦争体験素描――一九二九年前後世代を中心に――……安藤優一
堀辰雄の『萬葉集』受容に関する総合的研究――旧蔵書調査を中心として――……渡部麻実

=資料紹介=
橋間直治(陸軍少尉)資料――終わりし者、終わらぬ「もの」――……林宇
日本統治下朝鮮の国語教科書(架蔵)について……朴賢率
大日本帝国陸海軍国語教科書総覧稿――陸軍幼年学校・陸軍予科士官学校編――……小松靖彦
戦時下の今井福治郎――四冊の著作 付、略歴・主要著作目録……高橋美織
特別寄稿 今井福治郎先生の思い出……川﨑キヌ子
=再録=
学問の道……鈴木正彦

戦争と萬葉集研究会活動報告……小松靖彦


研究誌『戦争と萬葉集』創刊に当たって(創刊号より)

 日中戦争・太平洋戦争下、『萬葉集』を中心に、古典文学作品は大日本帝国政府と陸海軍によって戦意高揚のために政治利用された。しかし、それだけではなく、『萬葉集』などの古典文学作品は、戦争下の「国民」の「好戦」的表現の典拠として積極的に享受されると同時に、戦争を運命として受け容れざるをえぬ苦しみと諦めの「厭戦」的心情を託すものとなっていた。
 太平洋戦争敗戦後、日本古典文学研究は、戦争下の古典文学作品受容の歴史的な検討を十分に行わぬままに再出発した。敗戦から七十三年、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領の終結から六十六年、沖縄復帰から四十六年を経た今日、戦争を直接体験した人々が少なくなり、戦争下の貴重な資料も未調査のまま散逸しつつある。しかも、二〇一〇年代に入り、経済的には自国優先主義が、政治的感情としてはナショナリズムが世界的に高まり、人々の間で過去の戦争を理性的に捉える目が失われつつある。
 戦争下における『萬葉集』を中心とする古典文学作品受容の全体像をあくまでも学問的立場から明らかにし、戦争と文学がいかなる関係にあるかを究明することが、専攻分野を超えて日本文学研究者に今まさに求められている。本誌はその責務を果たすべく創刊された。
(表紙の図版=陸軍幼年学校・陸軍予科士官学校の教科書「国語教程」。左=『明治三十年編纂 国文教程 地方陸軍幼年学校用 第一篇』〈一八九七年〉、中=『昭和十二年印刷 国語教程 巻一』〈一九三七年〉、右=『昭和十九年印刷 国漢文教程甲 古文篇 陸軍予科士官学校用』〈一九四四年〉)