受贈図書
樽見博『自由律俳句と詩人の俳句』(文学通信)
樽見博氏よりいただきました。
自由律俳句と詩人の俳句
樽見 博 著
発行:文学通信
発行日:2021年3月1日
定価:本体2,700円+税
判型・製本:四六・並製
ページ数:352
ISBN:978-4-909658-50-0
公式サイトはこちら
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-50-0.html
伝統と呼ばれる「俳句」という形式はどういうものなのか。
五七五の定型は果たして疑う余地のないものなのか。
何ゆえ、定型から逸脱する自由律を選んだ人たちが現れたのか。
本書は自由律俳句と詩人たちの俳句に焦点をあて、知られざる近代俳句史をあきらかにする。どのような作品が生み出され、それらの作品はいかに受け止められたか。俳人・詩人たちは形式をめぐりいかなる論争を繰り広げ、彼らによって生み出された雑誌・書物などのメディアとはどのようなものだったのか。
蒐集された膨大な資料群を読みほどき、多数の俳句作品を紹介しながら考証する。
巻末には自由律の俳人・荻原井泉水の著作目録を付録として収録する。
目次
序にかえて 時代の生む魅力―中塚一碧楼の自由律句
俳句史における自由律/「俳句とは何か」と問い続ける
第一章 自由律俳句について
1 総合誌『俳句人』と敗戦に直面した自由律俳人たち
俳句全集から除外された自由律俳句/『俳句人』のなかの自由律俳句/『俳句人』第一巻より/松尾敦之「原子ばくだんの跡」
2 松尾敦之『原爆句抄』など
「とんぼう、子を焼く木をひろうてくる」/戦時中の松尾の句/松尾の戦後/『俳句人』第二巻より
3 『自由律』の創刊と生活の自然詩
俳句雑誌の統合と分裂/『自由律』創刊号「第一輯」から/戦時から日常へ
4 荻原井泉水の戦後の出発(上)
勝算の無いことは解りきつてゐた/レジスタンスの精神/『千里行』と『一不二』より
5 荻原井泉水の戦後の出発(下)
激動の時代でもゆるぎなく/時代への柔軟性/『層雲』復刊号より/『層雲』復刊後の内紛
6 合同戦争俳句集『みいくさ集』が描いた銃後
自由律戦争俳句集/『みいくさ集』の銃後俳句
7 改造社『俳句研究』における自由律俳句
俳句総合誌『俳句研究』と俳壇ジャーナリズムの誕生/秋桜子による自由律批判/『俳句研究』第一巻より
8 昭和13年の『改造』『俳句研究』俳句欄
俳句欄常設という画期/『俳句研究』昭和13年の自由律作品
9 終戦直後の『暖流』と自由律俳句の理念
『暖流』の復刊/論客が集う雑誌
10 荻原井泉水が継承した芭蕉の精神(上)
正統性の根拠としての芭蕉俳諧/井泉水と楸邨の芭蕉俳句評釈
11 荻原井泉水が継承した芭蕉の精神(下)
それぞれの芭蕉観/「俳句の本質は自由律」
12 萩原蘿月と内田南艸、まつもと・かずや
感動律と口語俳句/蘿月の個性/南艸『光と影』より/まつもと・かずやの口語俳句
第二章 自由律俳句の諸相
1 中塚一碧楼の句評と俳句
句評から俳句観を追う/季節感横溢の俳風
2 荻原井泉水の句評―草田男・虚子との違い
井泉水の句評/草田男と虚子の句評
3 尾崎放哉と種田山頭火の短律句
『大空』と『草木塔』より/比較すると見えてくる両者の本質/井泉水の放哉への強い思い
4 橋本夢道の長律句
二十〜三十代の句/自由律からプロレタリア俳句へ/『俳句生活』の創刊
5 改造社『俳句三代集』別巻「自由律俳句集」
別巻扱いされた自由律/参加を辞退した俳人たち
6 『層雲』が生んだ早逝の俳人・大橋裸木について
「骨を削り肌に刺す」制作ぶり/短律時代/荻原井泉水の二行句
7 三重県で生まれた自由律俳句誌『碧雲』
ルビ付き俳句を批判/田園のモダニズム
第三章 詩人の俳句
1 英文学者詩人・佐藤清の俳句
「詩は言葉の音楽的表現である」/佐藤清の俳句
2 国民詩人・北原白秋と自由律俳句
白秋の俳句/前田夕暮『白秋追想』/前田夕暮の俳句
3 鷲巣繁男―流謫の詩
通信兵から開拓農民へ/「内部震撼なくして真の韻律は生じない」
4 木下夕爾―孤独に堪える
孤独に堪え抜いた詩人/閉ざされた夢/友人・村上菊一郎の俳句
5 千家元麿の一行詩と俳句
徹底して平明で純な詩/「寂」感充溢の世界
6 北園克衛―モダニズム詩人たちの俳句
北園克衛と『鹿火屋』/『風流陣』の俳句
7 日夏耿之介―社交の俳句
濃厚な詩語/日夏耿之介の俳句
8 ゆりはじめ―横浜大空襲を問い続ける疎開派
疎開と空襲/『キヤッツアイ』と成田猫眼
付録・荻原井泉水著書目録抄
句集/井泉水句集年刊パンフレット/合同句集/全集/俳論・俳句入門書/芭蕉・一茶・子規関係/尾崎放哉・種田山頭火関係/随筆集その他
あとがき