文法の詩学
意味語/機能語の動態
藤井貞和 著
2024年9月30日発行
定価:6,600円(10%税込)
四六判・上製・476頁
ISBN:978-4-86803-007-2
〈文法〉と〈詩学〉が結びつく。
古典の物語や詩歌を読む立場から、ことばを〈意味語〉と〈機能語〉に分類。
作品を真に読み解くために、現代人にとって古典語となっている言語を当時の現代語として探究する試みが結実。
旧著『文法的詩学』(2012年)、『文法的詩学 その動態』(2015年)を全面改訂し、一冊に再構成。藤井詩学の決定版。
藤井 貞和(ふじい さだかず)
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Notes:
序章 「あけがたには」の詩学
1 〈文法〉と〈詩学〉
2 〈言語態〉学の一環
3 『国語学原論』の主語格、述語格
第一部 機能語が意味語を下支えする
一章 論理上の文法と表出する文法
1 意味はどこにあるか
2 「心」は意味か
3 言外の意味
4 意味を働かせるキー
5 論理上の主格を支える深層
二章 時間域、推量域、形容域
1 〈前 ‒ 助動辞〉図
2 krsm 四辺形、krsm 立体
3 助動辞どうしの機能差──小松モデル
4 世界の諸言語の〈意味語、機能語〉
三章 「あり、り」をめぐる
1 「り」(~る、~ある)の成立
2 「断定なり」には「あり」ar-i が潜む
3 「と」、「断定たり」
4 「ざり、ず」(~ない)〔否定する〕
5 活用語尾──形容詞のカリ活用
四章 起源にひらく「き」の系譜
1 「さしける、……はへけく」
2 けく、けば、けむ、けり
3 二行にわたる活用
4 起源譚としての「し」
5 史歌という視野から見る
6 「き」=目睹回想は正しいか
7 「まし」との関係
五章 伝来の助動辞「けり」──時間の経過
1 動詞「来り」との関係
2 「けり」の機能は時間の経過
3 「科学的ないし客観的方法」(竹岡)
4 確定的な未来へ注ぎ込む時間
六章 フルコトの過去、物語の非過去
1 叙事文学の語り
2 口承語りの文体──昔話
3 フルコトの語り──『古事記』
4 説話文学の「けり」と物語文学
5 物語の叙述は非過去
七章 「はや舟に乗れ。日も暮れぬ」
1 「ぬ、つ」を二つの焦点に
2 急げば舟に間に合うか
3 鳥たちが鳴き出さんとする
4 「秋来ぬと」「おどろかれぬる」
5 仮に身を事件の現場に置いてみる
6 〈完了〉と〈過去〉と
7 一語動詞からの転成
8 「た」の発達と「ぬ」の消長
八章 〈いま、さっき、つい先刻〉──「つ」
1 いましがた起きた
2 「つ」と「ぬ」と
3 ~となむ名のり侍りつる
4 想像と行為、あるいは未来
5 上接する語から「ぬ」と「つ」とを区別する?
九章 言文一致と近代──「た」の創発
1 古典のなかの「た」のあらわれ
2 古典の口語文に見る「た」
3 「だ」調常体とは
4 「たり」からの距離
5 〈歴史的現在〉とは
6 地の文の成立
十章 推量とは何か(一)──む、けむ、らむ、まし
1 人類は疑心暗鬼する動物
2 音韻が結合する
3 推量と意志と未来
4 まく、まほし、まうし
5 けむ(~たろう)
6 らむ(いまごろは~だろう)
7 「まし」(~よかったのに)
十一章 推量とは何か(二)──伝聞なり、めり
1 伝聞なり〔耳の助動辞〕
2 「ななり、あなり」──活用語終止形への下接
3 「はべなり」と「侍るなり」
4 「めり」(~みたい)〔見た目〕
十二章 推量とは何か(三)──べし、まじ
1 推量と意志──べし、べらなり
2 ましじ
3 まじ
4 「らむ、らし、べし」三角形
十三章 らしさの助動辞──「らし」
1 接尾語「らしい」とは何か
2 古語化し、再生する平安時代の「らし」
3 「不平み坐すらし」「置目来らしモ」
4 香具山にかかる夏雲
5 「あらし、らし」
十四章 し、じ、たし──形容、否定、願望、様態
1 前‒助動辞図
2 「あし」asi ──形容辞
3 否定辞──じ、ず、ざり、に
4 程度を否定する「なし」
5 願望──「まほし」から「たし」へ
6 ごとし、やうなり
十五章 「る、らる」「す、さす、しむ」
1 「る、らる」の四機能とは
2 自然勢(いわゆる自発)
3 不可能と可能態
4 「る、らる」は「受身」か
5 『万葉集』の「ゆ、らゆ」
6 「る、らる」の敬意
7 「す、さす」および「しむ」
8 高い尊敬
第二部 機能語が意味語を下支えする その二
十六章 助辞の言語態
1 格助辞のグループ
2 副助辞
3 八種の係助辞の配置
4 文末の助辞群
5 投げ入れる助辞群
6 接続助辞のグループ
7 いわゆる格助詞の「接続助詞」化問題
8 助辞、助動辞の相互の関係
十七章 「は」の〈主格補語〉性──「が」を覆う
1 主体的意識による表現
2 〈主格~所有格〉の「が、の」
3 「が」の上に立つ「は」
4 御局は桐壺なり──差異化としての「は」
5 「も」は〈同化〉
6 「対象語」(時枝)について
7 「周布」という視野
第三部 意味語の世界
十八章 名詞の類──自立語(上)
1 基本となる構文
2 「何がどうする」「何がどんなだ」
3 「何が何だ」構文
4 主格の形成
5 格
6 性/数、数詞
7 代名詞
8 固有称
9 連体関係節と吸着語
10 動態詞の名詞化
十九章 動く、象る──自立語(中)
1 世界の諸言語の活用のあるなし
2 動態詞一類の語幹──〈カ変、サ変、下二段〉
3 同──〈上一段、ナ変、上二段、ラ変、下一段、四段〉
4 動態詞二類(形容詞)と語幹
5 活用語尾「じ」
6 動態詞三類(形容動詞)
7 E尾とC辞とのつながり
8 音便と活用形
9 敬語動詞、敬語補助動詞
二十章 飾る、接ぐ──自立語(下)
1 副詞(擬態詞、作用詞)
2 連体詞(冠体詞)
3 接続詞
4 感動詞(間投詞)
二十一章 〈懸け詞〉文法
1 地口・口合いと懸け詞との相違
2 〝二重の言語過程〟
3 〝一語多義的用法〟
4 うたの全体感
5 表現者の格という文法
6 同音を並べる技法について
7 「二重の序」を持つうた
8 双分観を超えるために
第四部 人称と語り、表記
二十二章 物語人称と語り
1 紫上をかいま見する
2 会話文、心内文
3 四人称と人称表示
4 「見返る」女三宮、見たてまつる柏木
5 「見あはせたてまつりし」
二十三章 語り手人称と作者人称
1 物語の文法と談話の文法
2 ゼロ人称=語り手人称
3 作者人称=無人称
4 読者の人称は
5 作中にはいってゆく
二十四章 自然称と和歌表現
1 自然称、鳥虫称、擬人称
2 詠み手の「思い」
3 うたの真の主体とは
二十五章 漢字かな交じり文
1 〝文法〟は意味世界から独立する
2 脳内の内部メモリー
3 意味語/機能語と書くこととの対応
4 表意文字と表音文字
5 ひらがなの成立
6 漢字かな交じり文と近代詩
終章 言語は復活するか──言語社会に向き合う
1 投げかけることばでなければ
2 詩は粒子かもしれない
3 原子的な単位──ソシュール
4 言語過程説の提唱に至る時枝
5 アオリストへの遠投
6 「ことばは無力か」に対して答える
あとがき
索引