本居宣長の古典注釈
和歌の翻訳・本歌取・縁語 
藤井嘉章 著

2025年2月25日発行
定価:9,350円(10%税込)
A5判・上製・328頁
ISBN:978-4-86803-013-3

ためし読み 各種オンライン書店での購入

 

内容紹介著者紹介目次

『古今集遠鏡』『草庵集玉箒』『新古今集美濃の家づと』の用例を悉皆調査、宣長の古典解釈の実態に迫る。
論理的一貫性が強調されてきた宣長の古典解釈態度への評価を再検証。柔軟性をも兼ね備えることで思考を更新していく姿を実証する。
宣長の思考様式を新たに提示!

 


本書は、本居宣長の和歌解釈を、抽象的な次元ではなく、実際の現場に即した形で分析することで、宣長がどのようにテクストを読もうとしたのかを探り、そこから宣長の思考様式を掴み取ろうとしてきた。いわば、テクストを解釈している最中の宣長の頭の中を覗こうという目論見であったと言ってもよい。
(「終章」より)

藤井 嘉章(ふじい よしあき)

1987年、東京都生まれ。
東京外国語大学東アジア課程中国語専攻卒業。同大学院博士前期課程修了、同後期課程単位修得満期退学。博士(学術)。Cornell University East Asia Program客員研究員、日本学術振興会特別研究員DC、同PDを経て、現在、立教大学文学部文学科日本文学専修助教。
主な論文に「荻生徂徠の杜甫次韻詩」(『樹間爽風』第二号・2023年)、共訳書に許紀霖著、中島隆博/王前監訳『普遍的価値を求める 中国現代思想の新潮流』(法政大学出版局・2020年)がある。

序章

第一部 翻訳論

第一章 『古今集遠鏡』と本居宣長の歌論
 はじめに
 第一節 『古今集遠鏡』から見る「もののあはれ」論
 第二節 本居宣長の古典解釈態度をめぐる二つの立場
  ―『新古今集美濃の家づと』の研究史を事例に―
 第三節 『古今集遠鏡』と本居宣長の古典解釈態度をめぐる立場
 第四節 『古今集遠鏡』の「あはれ」俗語訳
 おわりに

第二章 本居宣長の俗語訳論―徂徠・景山の系譜から―
 はじめに
 第一節 「遠鏡」考
 第二節 荻生徂徠―中国古典テクスト読解法と「文理」―
 第三節 堀景山―「文理」から「語勢」へ―
 第四節 本居宣長の俗語訳への態度
 おわりに

第二部 本歌取論

第一章 『草庵集玉箒』における本歌取歌解釈の諸相
 はじめに
 第一節 本歌の詞の意味内容を変容させて新歌に利用する本歌取
 第二節 本歌と同一の歌境を新たな視点から捉える本歌取
 第三節 本歌の詩的世界に依拠しつつ展開を加える本歌取
 第四節 本歌に応和する本歌取
 第五節 心中の歌境を詠出するため本歌の詞を利用する本歌取
 第六節 本歌の詞を同系統の別の詞に置き換える本歌取
 第七節 本歌を二首取る本歌取
 第八節 縁語的連想による本歌取
 第九節 本歌の趣向を変えない本歌取
 おわりに

第二章 『新古今集美濃の家づと』における本歌取歌解釈の諸相
 はじめに
 第一節 『美濃の家づと』における本歌取解釈の諸相
 第二節 本居宣長本歌取論の古典解釈一般に占める位置
 おわりに

第三章 本居宣長手沢本『新古今和歌集』における本歌書入
 はじめに
 翻刻

第四章 宣長の新古今集注釈における本歌認定
  ―手沢本『新古今和歌集』書入と『美濃の家づと』の相違に着目して―
 はじめに
 第一節 本歌認定の定量分析による傾向
 第二節 「心を取る本歌取」への傾向
 第三節 縁語的連想による本歌取への傾向
 第四節 分節的解釈と一つの視点の消滅
 おわりに

第三部 縁語論

第一章 本居宣長における評語「縁」と「よせ」の輪郭
  ―宣長の縁語解釈の解明に向けて―
 はじめに
 第一節 「縁語」の構成要件
 第二節 宣長の評語「縁」
 第三節 宣長の評語「よせ」
 おわりに

第二章 宣長の「かけ合」の説―石原正明『尾張廼家苞』を手掛かりとして―
 はじめに
 第一節 句切れのとゝのひ
 第二節 一首内の二つの事柄が和歌的世界において共起することの必然性
 第三節 一首内の二つの事柄間における対照
 第四節 上下句の心の深さの均衡
 第五節 詞上・意味上の繋がり
 第六節 縁語関係を示しているもの
 おわりに

第三章 ことばと視覚―評語「たゝかはす」から定家歌改作再考へ―
 はじめに
 第一節 対照の思考― 評語「たゝかはす」―
 第二節 全体と個別の対照的把握
 第三節 ことばと視覚の一体的把握― 定家歌改作再考―
 おわりに

終章

初出一覧
あとがき
索引