懐風藻詳解　
井実充史・高松寿夫・土佐朋子 編

奈良時代に成立した日本最古の漢詩集を全解説！

『懐風藻』寛政五年版本を底本に、
「本文」「校異」「韻字」「作者」「詩題」「現代語訳」「語釈」「考察」で構成。
「本文」は最新の諸本理解による校訂をおこない、「語釈」は当時の知の状況に即し詳細をきわめる。
渾身の研究成果がここに結実。
7世紀後半からの100年にわたる、日本の文筆活動のあり様を跡付ける。

＊2024年度科学研究費（研究成果公開促進費）交付図書

「作品の語句や修辞を分析し、それがどこから作者にもたらされたか、そしてどのように共有されたかを考えることが、結局、この時代の文筆活動の実態を理解することになるだろう。懐風藻に掲載される作品が、ある字を用いるとき、その時代の人物が、その字義をなにを介してどのように理解していたか。ある語を用いるときに、それはどこから学習し、どのような意味や効果を期待して用いたか。すべて明らかにすることは不可能かもしれないが、現在得られる情報を広く当たり、なるべく具体的に分析することで、その累積の果てに、この時期の文筆活動の様相が、徐々に明確になってゆくのではないかと期待している。」——解説篇「本書のめざすもの」より

◉編者 ＊50音順

井実 充史（いじつ みちふみ）
福島大学教授

著書・論文：「『懐風藻』長屋王の詩三首について」（『福島大学人間 発達文化学類論集』39、2023年7月）、「釈道慈「初春在竹渓山寺於長王宅宴追致辞」について」（『早稲田大学日本古典籍研究所年報』13、2020年3月）、「『懐風藻』紀末茂「臨水観魚」について」（『福島大学人間発達文化学類論集』30、2019年12月）など。

高松 寿夫（たかまつ ひさお）
早稲田大学教授

著書・論文：『上代和歌史の研究』（新典社、2007年）、「箭集虫麻呂「侍讌」詩をめぐって」（『国語と国文学』101巻3号、2024年3月）、「弁正」か「辨正」か―『懐風藻』詩人の表記をめぐって―」（河野貴美子・杜暁勤編『中日古典学ワークショップ論集―文献・ 文学・文化―』第1巻、汲古書院、2024年）など。

土佐 朋子（とさ ともこ）
佛教大学教授

著書・論文：『静嘉堂文庫蔵『懐風藻箋註』本文と研究』（汲古書院、2018年）、『校本 懐風藻』（新典社、2021年）、「『懐風藻』版本の改訂とその依拠資料」（古代中世文学論考刊行会編『古代中世文学論考』第54集、新典社、2024年10月）など。

◉執筆者 ＊50音順

荒川 聡美（あらかわ さとみ）
早稲田大学非常勤講師

著書・論文：「『日本霊異記』にみえる唐・朝鮮半島―「自土」の自覚への契機―」（『WASEDA RILAS JOURNAL』No.8、2020年10月）、「仮名本『日本霊異記』の成立事情― 漢字本写本および『今昔物語集』との関係をめぐって―」（『国文学研究』第193集、2021年3月）、「仮名本『日本霊異記』の類型表現―死・蘇生・容貌の美について―」（『古代研究』第58号、2025年2月発行予定）など。

石丸 純一（いしまる じゅんいち）
中央大学杉並高等学校兼任講師

著書・論文：「『懐風藻』智蔵伝の「陽狂」（『WASEDA RILAS JOURNAL』No.11、2024年1月）、「『懐風藻』道慈伝が描く道慈像」（『WASEDA RILAS JOURNAL』No.9、2021年10月）、「春景の松―『懐風藻』松の表現をめぐって―」（『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第66輯、2021年3月)など。

楽 曲（がく きょく）
北京師範大学文学院講師

著書・論文：「家伝の体裁からみる『藤氏家伝』の構成」（『国語と国文学』97巻8号、2020年8月)、「元明朝の行政文書と政治―平城京遷都と「遷都平城詔」をめぐって―」（『国語国文』90巻8号、2021年8月)、「篇章」の成立―『懐風藻』序の叙述に見える重層構造―」(河野貴美子・杜暁勤編『中日古典学ワークショップ論集―文献・文学・文化―』第1巻、汲古書院、2025年)など。

顧 姍姍（こ さんさん）
亜細亜大学講師

著書・論文：「流水対からみる平安前期の日本漢詩文学の展開」（『和漢比較文学』45号、2010年8月)、「平安前期の竟宴詠史詩の一考察―詩作の題材からみる「文章経国」の理念―」（『言語・地域文化研究』17号、2011年3月)、「『懐風藻』における「稲葉」の表現について―『万葉集』と奈良時代の田園風景との関わりから―」（『地域文化研究』23号、2024年3月)など。

高橋 憲子（たかはし のりこ）
早稲田大学日本古典籍研究所招聘研究員

著書・論文：「Ｂ.Ｈ.チェンバレンによる『古事記』英訳―「枕詞」の場合―」（『第 38回国際日本文学研究集会会議録』2015年3月）、「チェンバレンによる古代の音の英訳―『古事記』の「ぬなとももゆらに」について―」（『文学・語学』第219号、2017年6月）、「『上宮記』逸文における「三枝王」（『早稲田大学日本古典籍研究所年報』第16号、2023年10月)など。

李 満紅（り まんほん）
茨城大学助教

著書・論文：「『懐風藻』における上官昭容詩の受容―紀男人「扈従吉野宮」を中心に―」（『古代研究』第55号、2022年2月）、「奈良時代前期の日本文学における中国六朝文学の受容―「型」の意識を中心に―」（三国志学会編『大上正美先生傘寿記念　三国志論集』汲古書院、2023年）、「高橋虫麻呂の筑波山関連歌の「嘯」の表現について」（『古代研究』第57号、2024年2月）など。

梁 奕華（りょう えきか）
広東外語外貿大学講師

著書・論文：「勅撰三集における独創的な聯語表現の形成―嵯峨詩壇における内部交流を視座に―」（『言語・地域文化研究』22、2016年1月）、「文武天皇「述懐」詩に見られる無為と文治の理念―古代日本漢文学史における当該詩の位置づけ―」（『言語・地域文化研究』25、2019年1月）、「菅原道真の詩におけるリズムの変相に関する一考察」（『樹間爽風』1、2021年12月）など。

林 宇（りん う）
吉林財経大学講師

著書・論文：「万葉集「秋風吹」訓再考」（『古代研究』第53号、2020年2月）、「上代文学における「露」の変遷―万葉集を中心に―」（『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第66輯、2021年3月）、「曹丕に擬えられる長屋王像を巡って─長屋王宅詩宴詩における建安期曹丕関連詩宴詩表現の受容─」（『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第69輯、2024年3月）など。

解説篇

懐風藻概説……井実充史
懐風藻の諸本……土佐朋子
懐風藻の研究史（諸注釈解題）……土佐朋子
本書のめざすもの……高松寿夫

注釈篇

凡例
懐風藻序
懐風藻目録
大友皇子
　伝
　1　五言侍宴一絶
　2　五言述懐一絶
河島皇子
　伝
　3　五言山斎一絶
大津皇子
　伝
　4　五言春苑言宴一首
　5　五言遊猟一首
　6　七言述志
　7　五言臨終一絶
釈智蔵
　伝
　8　五言翫花鶯一首
　9　五言秋日言志一首
葛野王
　伝
　10　五言春日翫鶯梅一首
　11　五言遊竜門山一首
中臣朝臣大島
　12　五言詠孤松一首
　13　五言山斎一首
紀朝臣麻呂
　14　五言春日応詔一首
文武天皇
　15　五言詠月一首
　16　五言述懐一首
　17　五言詠雪一首
大神朝臣高市麻呂
　18　五言従駕応詔一首
巨勢朝臣多益須
　19　五言春日応詔二首（１）
　20　五言春日応詔二首（２）
犬上王
　21　五言遊覧山水一首
紀朝臣古麻呂
　22　七言望雪一首
　23　五言得声清驚情四字一首
美努連浄麻呂
　24　五言春日応詔一首
紀末茂
　25　五言臨水観魚一首
釈辨正
　伝
　26　五言与朝主人一首
　27　五言在唐憶本郷一絶
調忌寸老人
　28　五言三月三日応詔一首
藤原朝臣史
　29　五言元日応詔一首
　30　五言春日侍宴応詔一首
　31　五言遊吉野二首（１）
　32　五言遊吉野二首（２）
　33　五言七夕一首
荊助仁
　34　五言詠美人一首
刀利康嗣
　35　五言侍宴一首
伊与部馬養
　36　五言従駕応詔一首
大石王
　37　五言侍宴応詔一首
田辺史百枝
　38　五言春苑応詔一首
大神朝臣安麻呂
　39　五言山斎言志一首
石川朝臣石足
　40　五言春苑応詔一首
山前王
　41　五言侍宴一首
采女朝臣比良夫
　42　五言春日侍宴応詔一首
安倍朝臣首名
　43　五言春日応詔一首
大伴宿禰旅人
　44　五言初春侍宴一首
中臣朝臣人足
　45　五言遊吉野宮二首（１）
　46　五言遊吉野宮二首（２）
大伴王
　47　五言従駕吉野宮応詔二首（１）
　48　五言従駕吉野宮応詔二首（２）
道公首名
　49　五言秋宴一首
境部王
　50　五言宴長王宅一首
　51　五言秋夜宴山池一首
山田史三方
　52序　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔并序〕
　52　五言秋日於長王宅宴新羅客一首
　53　五言七夕一首
　54　五言三月三日曲水宴一首
息長真人臣足
　55　五言春日侍宴一首
吉智首
　56　五言七夕一首
黄文連備
　57　五言春日侍宴一首
越智直広江
　58　五言述懐一首
春日蔵老
　59　五言述懐一首
肖奈王行文
　60　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔賦得風字〕
　61　五言上巳禊飲応詔一首
調忌寸古麻呂
　62　五言初秋於長王宅宴新羅客一首
刀利宣令
　63　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔賦得稀字〕
　64　五言賀五八年一首
下毛野朝臣虫麻呂
　65序　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔并序賦得前字〕
　65　五言秋日於長王宅宴新羅客一首
田中朝臣浄足
　66　五言晩秋於長王宅宴一首
長屋王
　67　五言元日宴応詔一首
　68　五言於宝宅宴新羅客一首〔賦得煙字〕
　69　五言初春於作宝楼置酒一首
安倍朝臣広庭
　70　五言春日侍宴一首
　71　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔賦得流字〕
紀朝臣男人
　72　七言遊吉野川一首
　73　五言扈従吉野宮一首
　74　五言七夕一首
百済公和麻呂
　75　五言初春於左僕射長王宅讌一首
　76　五言七夕一首
　77　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔賦得時字〕
守部連大隅
　78　五言侍宴一首
吉田連宜
　79　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔賦得秋字〕
　80　五言従駕吉野宮一首
箭集宿禰虫麻呂
　81　五言侍讌一首
　82　五言春日於左僕射長王宅宴一首
大津連首
　83　五言和藤原太政遊吉野川之作一首〔仍用前韻〕
　84　五言春日於左僕射長王宅宴一首
藤原朝臣総前
　85　五言七夕一首
　86　五言秋日於長王宅宴新羅客一首〔賦得難字〕
　87　五言侍宴一首
藤原朝臣宇合
　88序　五言暮春曲宴南池一首〔并序〕
　88　五言暮春曲宴南池一首
　89序　七言在常陸贈倭判官留在京一首〔并序〕
　89　七言在常陸贈倭判官留在京一首
　90　七言秋日於左僕射長王宅宴一首
　91　五言悲不遇一首
　92　五言遊吉野川一首
　93　五言奉西海道節度使之作一首
藤原朝臣万里
　94序　五言暮春於第園池置酒一首〔并序〕
　94　五言暮春於第園池置酒一首
　95　五言過神納言墟二首（１）
　96　五言過神納言墟二首（２）
　97　五言仲秋釈奠一首
　98　五言遊吉野川一首
丹墀真人広成
　99　五言遊吉野山一首
　100　七言吉野之作一首
　101　五言述懐一首
高向朝臣諸足
　102　五言従駕吉野宮一首
釈道慈2
　伝
　103　五言在唐奉本国皇太子一首
　104序　五言初春在竹渓山寺於長王宅宴追致辞一首〔并序〕
　104　五言初春在竹渓山寺於長王宅宴追致辞一首
麻田連陽春
　105　五言和藤江守詠裨叡山先考之旧禅処柳樹之作一首
塩屋連古麻呂
　106　五言春日於左僕射長屋王宅宴一首
伊支連古麻呂
　107　五言賀五八年宴一首
民黒人
　108　五言幽棲一首
　109　五言独坐山中一首
釈道融
　伝
　110
　擬作詩1
　擬作詩2　山中
石上朝臣乙麻呂
　伝
　111　五言飄寓南荒贈在京故友一首
　112　五言贈掾公之遷任入京一首
　113　五言贈旧識一首
　114　五言秋夜閨情一首
葛井連広成
　115　五言奉和藤太政佳野之作一首〔仍用前韻四字〕
　116　五言月夜坐河浜一絶
亡名氏
　擬作詩3　五言歎老

あとがき
執筆者紹介