日本語条件表現史論
矢島正浩 著

2月刊行予定
定価:8,250円(10%税込)
A5判・上製・516頁
ISBN:978-4-86803-033-1
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古代から近代へ、表現変化はどのような過程を経てきたのか。
文法史を構造的に把握し直すため、ケーススタディとして条件表現の変遷を探る。3つの視点、[Ⅰ通時的・時間的変化、Ⅱ共時的・空間的変異、Ⅲ資料的・文体的諸相]から史的変化を推し進める原理を明らかにし、体系的に捉える。
条件表現史という枠組みであっても、実際には日本語のどの部分を構成する歴史を対象としているのかが常に問われるべきであり、研究対象の位置づけに自覚的であることが求められる。さらに、この位置づけを踏まえることで、他の文法事象を対象とする研究との往還も、より意識的かつ効果的に行うことが可能となると考える。 ――「終章」
矢島 正浩(やじま まさひろ)
東北大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。
愛知教育大学教育学部助手・助教授・准教授を経て、現在、愛知教育大学教育学部教授。
主な著書
『近世語研究のパースペクティブ―言語文化をどう捉えるか』(共編著、笠間書院、2011年)、『上方・大阪語における条件表現の史的展開』(笠間書院、2013年)、『SP盤落語レコードがひらく近代日本語研究』(共編著、笠間書院、2019年)、『中部日本・日本語学研究論集』(共編著、和泉書院、2022年)など。
序章
Ⅰ.通時的・時間的変化
Ⅱ.共時的・空間的変異
Ⅲ.資料的・文体的諸相
凡例
第 1 部 古代語の方法から近代語の方法へ
第 1 章 原因理由史の再理解
1. 問題の所在―原因理由史で注目すべきこと―
2. 已然バ節による主観的因由
2.1. メバがなくメドモがあることについて
2.2. 已然バ節による主観的因由表現
3. 古代語において副次的に因由表現を担う方法
3.1. 文連接と因由表現
3.2. [連体形+助詞]節と条件節
4. [連体形+助詞]節による因由表現
5. [ム+助詞]節が広げる因由表現
5.1. 已然バ節による因由表現の制約をめぐって問われること
5.2. 已然バ節が後件で命令形を取る場合
5.3. [連体形+助詞]節が後件で命令形を取る場合
6. まとめ
6.1. 古代語における因由表現
6.2. 因由史の捉え方
第 2 章 逆接確定条件史の再編
1. はじめに
1.1. 順接確定史の概要
1.2. 本章で問うこと
2. 古代語における逆接確定条件
2.1. 逆接確定に関与する形式
2.2. ニ・ヲ節と逆接確定
2.3. ドモ節とニ・ヲ節―山口(1980)が意味するところ―
3. ガ節の捉え方
3.1. ガが接続助詞化するとはどういうことか
3.2. 従属節の構造レベルから見たガとドモ
3.3. ガ節とドモ節との違い
4. ニ・ヲ節の変容とガ節伸長の関係
4.1. ニ節のガ節との併用
4.2. ヲ節の衰退とガ節の発達
5. 確定条件史の再理解
第 3 章 タラバ・タリトモの消長
1. 問題の所在
2. タラバ節―再解釈により伸長する形式―
2.1. 古代の様相
2.2. 近世前期の様相
3. 仮定節における順接と逆接の相違
3.1. トモ節の〈任意事態〉性
3.2. トモ節の〈任意事態〉性を崩すもの
4. タリトモ節―再解釈を許容した上で伸長に至らなかった形式―
4.1. 古代の様相
4.2. 近世前期の様相
5. 逆接仮定表現における新・旧用法の関係性
5.1. (タ)トテの伸長
5.2. テ+モの果たす役割
5.3. テ+モとタリトモとの関係
6. まとめ
第 4 章 ナラバとナリトモの消長
1. はじめに
1.1. 問題の所在
1.2. 既定性とは
2. ナラバ節の推移
2.1. 古代のナラバ節
2.2. 文相当句を承けるナラバについて
2.3. 近世前期のナラバ節
3. 仮定節を作る上での順接と逆接の相違
3.1. 仮定条件における前件の役割―順接と逆接の相違をめぐって―
3.2. 〈任意事態〉性が生み出す逆接仮定節の特徴
4. ナリトモ節で起きたこと
4.1. 古代語における逆接仮定の表現
4.2. 副助詞化の背景
4.3. 既定性について
5. 結びに代えて―本書の仮説への接続―
第 5 章 条件表現史における「恒常性」再考
1. 条件表現史と「恒常性」
1.1. 「恒常性」をめぐる議論
1.2. 「恒常性」の担い手における古代語と近代語の相違
2. 「恒常性」の再定義
2.1. これまでの研究と、本書で留意したいこと
2.2. 前件・後件の時間性から見る「恒常性」
2.3. 「恒常性」の2種類
3. 順接条件における「恒常性」とその推移
3.1. 方法
3.2. 調査結果
3.3. 順接[恒常条件]の推移
4. 逆接条件における「恒常性」とその推移
4.1. 調査結果
4.2. 逆接[恒常条件]の推移
5. 条件表現史における[恒常条件]
第 6 章 恒常条件史の再理解
1. はじめに
2. 恒常条件とは
3. 古代語における恒常条件
3.1. 山口(1980)による恒常条件
3.2. 古代語の確定条件形式による恒常条件
3.3. 古代語の仮定条件形式による恒常条件
4. 恒常条件史を創り出すもの
4.1. 近世前期語の恒常条件における順接・逆接の非対称性
4.2. 已然形+バが仮定形+バになるとはどういうことか
4.3. 已然バ節に起きた用法拡張が、なぜドモには起きなかったのか
5. おわりに
第 2 部 中世後期以降の条件表現で目指されるもの
第 7 章 タラ節の用法変化
1. 問題の所在
1.1. 第 3章で残された課題
1.2. 検討に際して留意したいこと
2. 未然形+バによる仮定節の推移
3. 古代語における各時制辞による未然バ節
3.1. タリ・リ
3.2. キ
3.3. ツ・ヌ
4. タラ節の用法変化
4.1. 中世前期
4.2. 中世後期~近世前期
4.3. 近世後期
5. 結びに代えて―本書の仮説への接続―
第 8 章 ナラバ節の用法変化
1. 問題の所在
1.1. 小林(1996)が投げかける問い
1.2. それに対する本稿の見方、及び残された課題
2. 方法
2.1. 前件の時間性を問うこと
2.2. 「既定性」の有無を弁別してみること
3. スルナラバの用法変化
3.1. 中古~中世前期
3.2. 中世末期
3.3. 近世前期
3.4. 近世後期以降
4. タルナラバの用法変化
4.1. 中古~中世前期
4.2. 中世末期~近世前期
4.3. 近世後期以降
5. 条件構文の構造的変化がもたらしたもの
5.1. 時制節としての確立
5.2. ナラバ節の今日的な用法の成立
6. おわりに
第 9 章 ナレバ節の位置変化
1. はじめに
1.1. 問題の所在
1.2. 中世~近世にかけて起きた条件表現史上のできごと
2. 原因理由辞の使用状況
3. 条件表現体系の捉え方
3.1. 本章の問いに対応した方法設定
3.2. 先行研究の捉え方との関係
4. 〈恒常条件〉の広がり
4.1. 使用数に見る〈恒常条件〉の伸張
4.2. 使用の内実変化に見る条件表現の変容
5. 活用型条件句で起こって非活用型条件句では起こらないこと
6. 近世期の非活用型条件句に起きた条件表現の変化
7. おわりに
第 10 章 逆接仮定条件表現の変容
1. はじめに
1.1. 問題の所在
1.2. 検討対象
2. 前接語の状況
2.1. 上接語の接続方法と制約
2.2. 上接語から見たトモ・テモ・トテの相互補完性
3. トモの用法
3.1. 終止形と連用形を承けるトモ
3.2. トモが構成する従属句のレベル
3.3. トモが完了を承け、過去を承けないことの意味
3.4. ウトモの発生・定着
3.5. 副助詞化するナリトモ
4. トテの用法
4.1. トテの実現事態・現実の切り出し
4.2. トテの用法拡大
5. テモの用法
5.1. テモの連用修飾性
5.2. 逆接仮定辞としての発達
6. 近世前期における逆接仮定辞の共存と条件表現史
第 11 章 逆接確定条件表現の変容
1. はじめに
1.1. 問題の所在
1.2. 調査資料
2. 古代の逆接確定条件
2.1. ドモによる逆接
2.2. 古代のドモ
2.3. 接続助詞ガの初期の用法
3. 近世前期のドモ・ケレド・ガ
3.1. 概要
3.2. ドモ
3.3. ケレド
3.4. ガ
4. 条件表現史への位置づけ
4.1. ガの用法拡張について
4.2. ガの変化の背景
5. おわりに
第 3 部 地域性と条件表現
第 12 章 否定疑問文の用法から見た地域差
1. 通史的言語研究における近世と文法史研究
2. 方法
2.1. 否定疑問文を取り上げること
2.2. 調査資料
3. 否定疑問文の用法
3.1. 用法整理
3.2. 否定疑問文と隣接領域にある表現との関係
4. 近世上方語と江戸語における否定疑問文の用法差
4.1. 使用頻度の推移
4.2. 近世期否定疑問文の用法別使用状況
5. 否定疑問文の使用と地域的特性との関係
5.1. 第Ⅰ・Ⅱ類 ~デハナイカの江戸語・上方語での用法
5.2. 第Ⅲ類の江戸語・上方語での用法
6. 上方多用型・江戸多用型の表現の指向性
6.1. 各種表現の東西差と表現指向との関係
6.2. 上方多用型の表現が化政期以降の江戸語で起こす変化について
7. おわりに
第 13 章 否定疑問文の用法から見た近世後期上方語の特性
1. 問題の所在
2. 方法設定
3. 否定疑問文の用法推移
3.1. 増加傾向にある否定疑問文
3.2. 否定疑問文の用法
3.3. 否定疑問文の用法別使用状況の推移
3.4. 否定疑問文の使用の偏りの意味するところ
4. 上方語における連用形+ンカの発達
4.1. 連用形+ンカの発達の様子
4.2. 未然形+ンカを維持する場合
5. 上方語における授受形式を含む疑問文の発達
5.1. 連用形+ンカの発達と(オ)クレンカとの関係
5.2. 授受形式を含む疑問文の使用状況
5.3. 地域語としての上方語と連用形+ンカ
6. おわりに
第 14 章 順接仮定辞による接続詞的用法
1. はじめに
1.1. 目的
1.2. 接続詞的用法の範囲
1.3. 資料
2. これまでに明らかにされていること
2.1. 近代以前の[接続詞]の使用状況
2.2. 表現の指向性
3. [接続詞]と[接続助詞]との関係
4. [接続詞]の詳細
4.1. 各形式と用法領域の関係
4.2. 使用例に基づく用法の確認
5. [接続詞]の使用状況
5.1. 調査結果
5.2. 各用法の特徴と地域差
5.3. 接続詞的用法の地域差が物語ること
6. おわりに
第 15 章 原因理由辞による接続詞的用法
1. はじめに
1.1. 問題の所在
1.2. 先行研究
2. 方法
2.1. 資料
2.2. 検討対象
3. [接続詞]と接続助詞の関係
4. 原因理由系の接続詞的用法
4.1. 用法の二分について
4.2. 使用状況
4.3. 非帰結的用法に見える地域差
4.4. 非帰結的用法を用いるとはどういうことか
4.5. 談話展開の方法と非帰結的用法
5. まとめ
第 16 章 逆接確定辞による接続詞的用法
1. はじめに
1.1. 問いの所在
1.2. 資料
2. 調査資料における使用状況
2.1. 概況
2.2. 用法別に見た形式の推移
2.3. [接続詞]の形式変化の概要
3. [接続詞]の作り方に見る東西差
3.1. 上方語の[接続詞]
3.2. 江戸語の[接続詞]
4. おわりに
第 4 部 資料性と条件表現
第 17 章 近代語資料と逆接仮定表現
1. はじめに
1.1. 本章で明らかにしたいこと
1.2. 取り上げる語形
1.3. 調査資料および調査範囲の限定
2. 使用状況の確認
2.1. 各資料の接続助詞使用概要
2.2. テモとタッテの用法差
2.3. 『CHJ明治・大正編』の資料別使用状況
2.4. 各接続助詞が用いられる文体特性
3. 上接語から見るトテ類の用法史
3.1. 各資料別使用状況
3.2. トモからテモへと受け継がれない領域
3.3. トテ系の用法
3.4. 順接仮定形式との相似性
4. まとめと課題
第 18 章 演説体と順接条件表現
1. 本章の目的
2. 方法
2.1. 条件表現を指標とすること
2.2. 用法整理
2.3. 検討対象ならびに各接続辞の扱い
2.4. 調査に用いる資料
3. 話し言葉資料でも使用が見られる接続辞について
3.1. 仮定的用法
3.2. 事実的用法
3.3. 原因理由用法
4. 話し言葉資料では多用されない接続辞について
4.1. 概要
4.2. 仮定条件系
4.3. 確定条件系
5. 演説の文体を形作るもの
5.1. 演説と接続辞類の使用との関係
5.2. 演説の文体を特徴付けるもの
5.3. 演説を用いた検討が拓く近代日本語文法史研究
6. おわりに
第 19 章 落語速記本と原因理由表現
1. はじめに
1.1. 『上方はなし』を取り上げること
1.2. 方法設定
1.2.1. 原因理由辞を取り上げることについて
1.2.2. 比較資料に音声落語・談話資料を用いることについて
1.2.3. 検討対象とする語形について
1.3. 課題の整理
2. 『上方はなし』における原因理由辞の選好傾向―Ⅰの検討~その1―
2.1. 他の資料との比較より
2.2. 使用部位別使用概観
3. 『上方はなし』の成立期と言語特性の関係―Ⅰの検討~その2―
3.1. 『上方はなし』の成り立ち
3.2. 用法別使用状況の変化
3.3. 原因理由辞別使用状況の変化
3.4. 主編者の交代との関係
4. 落語資料の固有性―Ⅱ1の検討、並びにⅠの要素との関係について―
4.1. 接続辞の使用と位相
4.2. 話者別の傾向とⅠの要素との関係について
5. 落語資料の固有性―Ⅱ2の検討、並びにⅠの要素との関係について―
5.1. モノ・コト+接続辞の多用
5.2. [接続詞]の用法
6. 資料に実現する文法
6.1. 『上方はなし』に描かれる文法
6.2. 資料と文法研究
第 20 章 近現代共通語と逆接確定表現
1. はじめに
2. 調査対象資料
2.1. 資料及び調査範囲
2.2. 調査資料の言語的性質の概要
2.3. ガの書き言葉性? ケレドの話し言葉性?
3. 敬体への集中
3.1. ガ・ケレド節の敬意度
3.2. 主節の文体との関係
4. 「の」を取る述語の多用傾向
4.1. 従属節でノを取ることの意味
4.2. 受け手の受容に関連付けた表現へ
5. 起こっていること
5.1. ガとケレドの違い
5.2. 逆接確定節で分担が起きる事由
6. おわりに
終章
終章Ⅰ 第1・第2部の議論から―日本語条件表現史の素描―
1. 古代条件表現の基本
2. 中世後期以降における条件表現の拡張と転換
2.1. 新たに条件表現の対象となる領域
2.2. 中世後期以降の変化に共通すること
3. 条件表現史における順接・逆接の体系性について
3.1. 順接と逆接に見る共通点と相違点
3.2. 非対称性の背後にあるもの
4. 近代語(広義)における従属節体系の展開
4.1. 確定条件における表現領域の拡張
4.2. 従属節の階層レベルの細分化
終章Ⅱ 第1~第4部の関係―日本語条件表現史と言語相―
参考文献
既発表論文との関係
あとがき
索引

