泉鏡花の演劇 
小説と戯曲が交差するところ 
鈴木彩 著

2023年1月20日発行
定価:4,950円(10%税込)
A5判・上製・272頁
ISBN:978-4-909832-65-8

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内容紹介著者紹介目次

日本文学史上に屹立する鬼才、鏡花。
小説の改作と脚色、鏡花作品にしかないユニークさと面白みを再発見!

小説と戯曲ないしは改作が、パラレルに共存する鏡花。原作となる小説と戯曲が文学作品として拮抗しあい、新しい生命を創造してゆく。その変幻自在な手法に鏡花の現代性を見る。

【鏡花生誕150年記念】


カバー挿画「辻番付 1907(明治40)年3月22日 東京新富座 堀川波の鼓/滝の白糸」(公益財団法人 松竹大谷図書館所蔵)については、下記を御参照ください。

松竹大谷図書館 芝居番付検索閲覧システムより
https://www.dh-jac.net/db1/ban/A-1-5R-01_006/shochiku/0/

鈴木 彩(すずき あや)

1986年生、東京都出身。
慶應義塾大学大学院 文学研究科 国文学専攻後期博士課程単位取得退学。
博士(文学、慶應義塾大学)。
現在、愛知教育大学 国語教育講座 講師。

 凡例

序論
 一 原作者にして、脚色者

 二 〝アダプテーション研究〟と本書

 三 戯曲形式のテクストから鏡花をみる意義

第一部 作りかえる泉鏡花・作りかえられる泉鏡花

  *コラム1「〝語り〟の視点」
第一章 「かきぬき 白鷺の一二節」の機能──新派劇化に伴う語り手の変容について
 一 一人称・回想体小説の演劇化
 二 小説「白鷺」は誰に、何を語るのか
 三 原作を代替する試み
 四 物語の統括者から、劇中人物へ
 五 芸妓からの解放──〈白鷺〉の新たな展開──

第二章 「南地心中」と「鳥笛」「公孫樹下」の人物描写──お珊への眼差し
 一 視点人物「初阪もの」の消失
 二 〈執着する、人間ならざる女〉
 三 目に見えるもの/見えないもの
 四 観客という視点
  *コラム2 「「新派悲劇」と「鏡花物」」

第三章 新派劇〈婦系図〉と原作テクスト──「湯島の境内」を視座として
 一 原作者による書き改め
 二 意識される原作
 三 引用される原作
 四 お蔦の造形──「女房」と「味方」──
 五 主税の造形──「罪」の有無──

第四章 〈瀧の白糸〉上演史における「錦染瀧白糸」の位置
 一 「錦染瀧白糸」に対する従来の評価
 二 「欣弥妹」の物語
 三 新派劇〈錦染瀧白糸〉という文脈
 四 「欣弥妹」から「撫子」への変化がもたらす影響
 五 「錦染瀧白糸」「義血侠血」における白糸と欣弥の関係

第五章 原作「日本橋」のその先へ──「戯曲日本橋」の〝わかりやすさ〟の意義
 一 監修者としての泉鏡花
 二 「戯曲日本橋」は理解しやすい作品になったか
 三 怪異譚としての「日本橋」の可能性
 四 イメージの拡散から限定へ
 五 原作から新たな物語へ

第六章 伝説から「海神別荘」へ・「海神別荘」から歌劇へ
 一 「海神別荘」の過去と未来
 二 古典文学・伝説における人間の眼差し
 三 陸と海の価値観、その融合
 四 「愛」と「心」が導く共生
  *コラム3「現代の泉鏡花上演」

第二部 演劇が上演される場と泉鏡花

  *コラム4「再び〝語り〟の視点」
第七章 読者から観客へ──「水鶏の里」「深沙大王」が想定する受容者
 一 「深沙大王」に包含された「水鶏の里」
 二 読者には〈見えない〉領域──「水鶏の里」と語り手──
 三 戯曲の〈見えない〉領域──観客は何を目撃するか──
  *コラム5「〝演劇〟を観る場」

第八章 劇場空間と怪異──「陽炎座」が描く観劇体験──
 一 「劇場」は私たちに何を見せるか
 二 幕の裏に隠された異界
 三 拙い芝居を観ることの意味
 四 虚構が、虚構であることをやめる時
 五 物語の消費者への問い

第九章 「紅玉」が描く「見立て」と「真似」の力学
 一 「わが国初の野外劇」として
 二 二つの「自然」──装置と俳優──
 三 「見立て」と「真似」の論理
 四 人間にできること・観客と俳優にできること

第十章 反転する吉原の価値──「恋女房」における「人」と「魔もの」──
 一 〝幻想的戯曲〟の系譜と「恋女房──吉原火事──」
 二 「人」と「人」との対立
 三 「魔もの」との対立
 四 一つの対話と二つの物語
 五 吉原が焼かれる理由

 初出一覧
 あとがき
 要語索引