『源氏物語』創成と記憶
平安から江戸まで 
渡邉裕美子・田渕句美子 編

2024年12月25日発行
定価:3,960円(10%税込)
A5判・並製・352頁
ISBN:978-4-86803-014-0

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内容紹介著者紹介目次

未来へつなぐ。

物語誕生の時代から江戸時代後期、そして現代にいたるまで、『源氏物語』は何を創造し、どのように伝播して、人々に共有される記憶となり、そこから何が新たに創造されたのか。
『源氏物語』という作品そのものの特質・存在を捉え返す。

 


『源氏物語』とは日本文化にとってどういう存在なのか、ということを考えようとするとき、テクストとしての『源氏物語』の読みを深めるのと同時に、文化資源としての『源氏物語』を大きな視野から捉え返すことが必要なのではないか。時代・ジャンルなどの異なる、さまざまな専門的な知見を結集して初めて見えてくるものがあるに違いない。そのような意図をもって本書は企画された。
(「はじめに」より)

渡邉 裕美子  わたなべ ゆみこ 編者
立正大学教授
著書・論文:『新古今時代の表現方法』(笠間書院、2010年)、「彷徨する寂蓮ー寿永百首家集『寂蓮集』雑部をめぐってー」(『日本文学研究ジャーナル』20、2021年12月)、「『毎月抄』の〈読者〉考」(佐々木孝浩・佐藤道生・高田信敬・中川博夫 編『古典文学研究の対象と方法』花鳥社、2024年)など。

田渕 句美子  たぶち くみこ 編者
早稲田大学教授
著書・論文:『百人一首―編纂がひらく小宇宙―』(岩波新書、2024年)、「『紫式部日記』首欠説をめぐって―中世からの視野―」(川村裕子編『平安朝の文学と文化―紫式部とその時代』(武蔵野書院、2024年)、「ジェンダーから再構築する題詠恋歌―『正治初度百首』を中心に―」(『日本文学研究ジャーナル』30、2024年6月)など。


収録順

高田 祐彦  たかだ ひろひこ
青山学院大学教授
著書・論文:『源氏物語の文学史』(東京大学出版会、2003年)、『新版古今和歌集』(訳注、KADOKAWA、2009年)、『高木市之助 文藝論の探求』(岩波書店、2021年)など。

鈴木 裕子  すずき ひろこ
駒澤大学教授
著書・論文:『『源氏物語』を〈母と子〉から読み解く』(角川書店、2005年)、『源氏物語大事典』(共編著、角川書店、2011年)、「源氏物語における死と救済―葵の上の死をめぐり―」(『駒澤大学総合教育研究部紀要』第18号、2024年3月)など。

陣野 英則  じんの ひでのり
早稲田大学教授
著書・論文:『源氏物語論―女房・書かれた言葉・引用―』(勉誠出版、2016年)、『堤中納言物語論―読者・諧謔・模倣―』(新典社、2022年)、「『源氏物語』において揺り戻される時間」(川村裕子編『平安朝の文学と文化―紫式部とその時代―』武蔵野書院、2024年)など。

松薗 斉  まつぞの ひとし
愛知学院大学教授
著書・論文:『日記の家―中世国家の記録組織―』(吉川弘文館、1997年)、『中世禁裏女房の研究』(思文閣出版、2018年)、『中世の王家と宮家―皇子たちの中世―』(臨川書店、2023年)など。

海野 圭介  うんの けいすけ
早稲田大学教授
著書・論文:『和歌を読み解く 和歌を伝える―堂上の古典学と古今伝受―』(勉誠出版、2019年)、『天野山金剛寺善本叢刊 1~5』(共編著、勉誠出版、2017~2018年)、「いわゆる立川流『阿字観』の変容」(『日本文学研究ジャーナル』29号、2024年3月)など。

佐々木 孝浩  ささき たかひろ
慶應義塾大学教授
著書・論文:『日本古典書誌学論』(笠間書院、2016年)、「「大島本源氏物語」の「若紫」末尾四行の筆者について―「大島本」書写環境の再検討―」(『斯道文庫論集』56、2022年2月)、「大内文化と「阿弥陀寺本平家物語」」(松尾葦江編『長門本平家物語の新研究』花鳥社、2024年)など。

小川 剛生  おがわ たけお
慶應義塾大学教授
著書・論文:『二条良基』(吉川弘文館、2020年)、『中世和歌史の研究―撰歌と歌人社会―』(塙書房、2017年)、『兼好法師』(中央公論新社、2017年)など。

盛田 帝子  もりた ていこ
京都産業大学教授
著書・論文:『近世雅文壇の研究―光格天皇と賀茂季鷹を中心に―』(汲古書院、2013年)、『古典の再生』(編著、文学通信、2024年)、『江戸の王朝文化復興―ホノルル美術館所蔵レイン文庫『十番虫合絵巻』を読む―』(共編著、文学通信、2024年)など。

齋藤 真麻理  さいとう まおり
国文学研究資料館教授・総合研究大学院大学教授(併任)
著書・論文:『異類の歌合―室町の機智と学芸―』(吉川弘文館、2014年)、『妖怪たちの秘密基地―つくもがみの時空―』(平凡社ブックレット、2022年)、『戯画図巻の世界―競う神仏、遊ぶ賢人―』(編著、KADOKAWA、2024年)など。

加藤 弓枝  かとう ゆみえ
名古屋大学大学院准教授
著書・論文:『小沢蘆庵自筆 六帖詠藻 本文と研究』 (共著、和泉書院、2017年)、「絵入百人一首の出版―女子用往来物を中心に―」(中川博夫・田渕句美子・渡邉裕美子編『百人一首の現在』青簡舎、2022年)、「近世絵入り歌書の出版―視覚化された古典和歌―」(『文学・語学』241、2024年8月)など。

 はじめに

Ⅰ 物語の創造

六条御息所から六条院へ―源氏物語の時間と空間―高田祐彦
父としての光源氏―明石の姫君の教育をめぐって―鈴木裕子
『源氏物語』の和歌があらわにする傲り
  ―その眼差しと逸脱が意味するもの―田渕句美子
『源氏物語』から平安後期物語にわたる笑い
  ―『御津の浜松』の例から―陣野英則

Ⅱ 伝播と再創造

『源氏物語絵巻』制作をめぐって―王家・女院・源氏―松薗斉
仏法の文芸と『源氏物語』
  ―法会・源氏供養・一つ蓮の言説をめぐって―海野圭介
『源氏物語』の遺響と創造―新古今時代を中心に―渡邉裕美子
「大島本源氏物語」研究の現在佐々木孝浩

Ⅲ 空間・階層・ジェンダー

古河公方周辺の源氏物語愛好―源氏物語文字鋂を中心に―小川剛生
近世後期宮廷と『源氏物語』―光格天皇の時代を中心に―盛田帝子
御伽草子の世界における『源氏物語』齋藤真麻理
女子用往来物と絵入源氏物語
  ―近世出版文化にみる教養の浸透と均質化―加藤弓枝

 あとがき
 執筆者紹介