古今和歌六帖の文学史
田中智子 著
2025年2月20日発行
定価:9,900円(10%税込)
A5判・上製・384頁
ISBN:978-4-86803-016-4
どのような歌集なのか――根源的問いに挑む。
他の歌集や物語との比較から、『古今和歌六帖』の配列構造と和歌表現の特質を明らかに。
古代文学のありようを広く見渡して、『古今和歌六帖』を核とした文学史の見取り図を描く。
*2024年度科学研究費(研究成果公開促進費)交付図書
「『古今六帖』の成立した十世紀後半は、『万葉集』の訓読作業が行われ、『古今集』が古典として流布し、さらには『後撰集』が成立したのちの時代である一方で、『源氏物語』や『枕草子』といった作品の成立をひかえた時期にあたり、ともすれば文学史上の狭間の時代とみなされてきたように思われる。しかしながら見方を変えれば、『古今六帖』という歌集は、あまたの和歌が氾濫していた十世紀後半――勅撰集のほかにも多様な私家集が編まれ、歌合や屛風歌が隆盛し、万葉歌が流布した――を象徴する歌集ともいえるのではあるまいか。」——「序章」より
田中 智子(たなか ともこ)
1988年 徳島県に生まれる
2011年 東京大学文学部国文学専修課程卒業
2017年 同大学院博士課程単位取得満期退学
博士(文学)
現在 神戸大学大学院人文学研究科専任講師
『古今和歌六帖』や初期定数歌歌人を中心とした、十世紀後半頃の和歌文学を主な研究対象としている。
平安和歌における万葉歌の享受のあり方にも関心を寄せている。
序章 古今和歌六帖概説 ―研究史の回顧と本書の主題と意義―
はじめに
一 古今和歌六帖概説
二 古今和歌六帖の研究史
三 本書の主題と意義
おわりに
第Ⅰ部 古今和歌六帖の生成と享受
第一章 古今和歌六帖の万葉歌と天暦古点
はじめに
一 古今和歌六帖と万葉集
二 古今和歌六帖の万葉歌と古点(一)
三 古今和歌六帖の万葉歌と古点(二)
四 古今和歌六帖の万葉歌の本文の変容
おわりに
第二章 古今和歌六帖と伊勢物語
はじめに
一 伊勢物語第二次成立章段と古今和歌六帖
二 伊勢物語第三次成立章段と古今和歌六帖(一)
三 伊勢物語第三次成立章段と古今和歌六帖(二)
四 その他の章段と古今和歌六帖
おわりに
第三章 古今和歌六帖の採歌資料 ―源順の大饗屛風歌を中心に―
はじめに
一 当該屛風歌の成立に関する先行諸説
二 当該屛風歌の成立について
三 古今和歌六帖の撰者・成立年代について
おわりに
付論 源順の大饗屛風歌の構成
第四章 古今和歌六帖の物名歌 ―三代集時代の物名歌をめぐって―
はじめに
一 物名歌の題材(一)
二 物名歌の題材(二)
三 物名題と歌意の関連性
四 物名歌の技巧性
おわりに
第五章 古今和歌六帖から源氏物語へ ―〈面影〉項を中心に―
はじめに
一 第四帖恋部と第五帖雑思部
二 恋部の立項の論理
三 面影の和歌表現史
四 古今和歌六帖〈面影〉から源氏物語へ
おわりに
第Ⅱ部 古今和歌六帖の構成
第一章 古今和歌六帖の構成と目録
はじめに
一 古今和歌六帖の目録をめぐる諸問題
二 総目録・帖目録・本文中の項目名の異同(一)
三 総目録・帖目録・本文中の項目名の異同(二)
四 第一帖歳時部の分類について
五 第一帖の帖目録の漢字表記について
おわりに
第二章 雑思部の配列構造 ―古今和歌集恋部との比較を中心に―
はじめに
一 雑思部の項目
二 雑思部の項目配列の方法
三 雑思部と古今集恋部
四 雑思部の配列構造について
おわりに
第三章 四季のはじめとはての歌 ―古今和歌集四季部との比較を中心に―
はじめに
一 古今集四季部にみる季節のはじめとはて
二 亭子院歌合と古今集春部
三 古今集撰者と季節のはじめ・はて
四 古今和歌六帖にみる季節のはて
五 古今和歌六帖にみる季節のはじめ
おわりに
第四章 歳時部の構成 ―網羅性への志向―
はじめに
一 歳時部の項目の分類基準
二 歳時部にみえる月次の時間構造
三 A「暦月を示す項目」とC「年中行事に関わる項目」
四 A「暦月を示す項目」の採歌源
五 A「暦月を示す項目」とB「季節の節目の項目」
おわりに
第五章 古今和歌六帖における和歌分類の論理 ―万葉集から古今和歌六帖へ―
はじめに
一 「物」による歌の分類
二 万葉集巻十の分類法と古今和歌六帖の項目
三 古今和歌六帖の立項の方法と万葉集巻十
四 古今和歌六帖と万葉集巻十における和歌分類の基準
おわりに
第Ⅲ部 古今和歌六帖とその時代
第一章 大伴家持の立春詠
はじめに
一 家持と暦月・二十四節気
二 四四九〇番歌 ―改年迎春を寿ぐ歌―
三 四四九二番歌(一)―シカスガニをめぐって―
四 四四九二番歌(二)―トカの用法―
五 家持歌と年内立春
おわりに
第二章 曾禰好忠歌の表現 ―毎月集の序詞を中心に―
はじめに
一 毎月集について
二 典型的な序歌の表現
三 毎月集冒頭の序歌
四 本旨が呼びかけの表現になっている序歌
五 序歌を越えて
おわりに
第三章 曾禰好忠の「つらね歌」
はじめに
一 つらね歌の特徴
二 つらね歌の尻取り構造について
三 つらね歌にみる同音の繰り返し
四 つらね歌Aと蝉聯体の詩
五 つらね歌の主題と表現
おわりに
第四章 円融院子の日の御遊と和歌 ―御遊翌日の詠歌を中心に―
はじめに
一 歌会の次第と曾禰好忠追放事件
二 『円融院御集』の贈答歌群
三 曾禰好忠の「つらね歌」
おわりに
第五章 述懐歌の機能と類型表現 ―毛詩「鶴鳴」篇をふまえた和歌を中心に―
はじめに
一 「鶴鳴」篇をふまえた漢詩文
二 大江千里の述懐歌
三 述懐歌の機能とその類型表現
おわりに
第六章 源氏物語の独り言の歌
はじめに
一 「独りごつ」「独り言」の語義
二 他者がいない場での独り言の歌
三 他者に聞かれる独り言の歌
四 薫の独り言の歌
おわりに
終章 古今和歌六帖の成立と流布
はじめに
一 古今和歌六帖の成立年代
二 古今和歌六帖の成立と流布
三 中世における古今和歌六帖享受
四 近世・近代における古今和歌六帖享受
おわりに
初出一覧
あとがき
索引(和歌初句・人名・書名・事項名)