訓読と漢語の歴史[ものがたり]
福島直恭 著
2019年2月28日発行
2019年11月30日再版
定価:2,640円(10%税込)
四六判・上製・284頁
ISBN:978-4-909832-03-0
訓読文はどのように成立しどのような変遷をたどったのか
なぜ昔の日本人は、中国語の文章や詩を翻訳するときに、「ちょっと違った感じのする日本語」にしたのか。
訓読文を語るときに欠かせない、漢語についても詳しく説明――漢語とは何か、どのように日本語の中に入ってきたのか。
漢文の授業が苦手だった人も楽しめる「ものがたり」。
福島 直恭(ふくしま・なおやす)
学習院女子大学国際文化交流学部教授。
博士(言語学)。
著書に、
『〈あぶないai〉が〈あぶねえe:〉にかわる時― 日本語の変化の過程と定着』(笠間書院、2002)
『書記言語としての「日本語」の誕生― その存在を問い直す』(笠間書院、2008)
『幻想の敬語論―進歩史観的敬語史に関する批判的研究』(笠間書院、2013)
などがある。
本書を読んでくださる方へ
序章 本書の基本的立場
1 「歴史」ということばの捉え方
2 訓読と訓読文についての研究
3 本書における言語と文字の関係
3・1 記号としての言語と記号としての文字の関係
3・2 表意文字と表音文字について
4 本書の構成
第1章 訓読についての基本的説明
1 「訓読」とはどういうことか
1・1 本書における「訓読」の定義
2 訓読のプロセス
3 訓読の過程における2種類の制約の再確認
3・1 解釈における選択幅と文体面における選択幅
3・2 表記における選択幅
4 訓読行為の主体
第2章 他文化受容の一形態としての借用
1 借用について
1・1 借用の定義
1・2 借用とコードスイッチング
2 借用語としての漢語
3 漢語借用のはじまり
3・1 漢語と訓読文
3・2 なぜ借用するのか
4 その後の漢語
4・1 漢語と和文
4・2 漢語と和漢混淆文
4・3 漢語と現代標準日本語
第3章 漢語の受容と日本語の変化
1 借用語の定着度について
2 訓読文と漢語
3 中国語の単語を借用するための工夫
3・1 日本語の単語としての加工
3・2 日本語のルールの変更
4 漢語使用の広がりと漢語の違和感の軽減
4・1 漢語使用の広がり
4・2 音便について
4・3 和漢混淆文中の漢語の存在意義
4・4 本章のまとめ
第4章 訓読文体の確立と訓読文の表記の変遷
1 訓読の定義再論
1・1 訓読の一般的説明
1・2 一般的な説明の問題点
2 書記言語としての訓読文
2・1 「文体」について
2・2 口頭言語と書記言語
2・3 訓読文の位置づけ
2・4 訓読文体の成立
2・5 集団規範としての訓読文
3 訓読文の表記の変遷
3・1 訓読文のさまざまな表記
3・1・1 ヲコト点による表記
3・1・2 角筆による表記
3・1・3 紙の裏側への書き込み
3・1・4 簡略文字や読み順を示す記号による表記
3・2 訓読文表記の変遷のまとめと訓読文という文体の確立
第5章 訓読文の変遷と終焉
1 訓読文とその他の言語変種
1・1 諸言語変種の整理
1・2 文字列の外見からの言語変種の区別の可能性
2 その後の訓読文
2・1 拡張訓読文の成立
2・2 拡張訓読文の具体例
2・3 他の文体への影響
2・3・1 和漢混交文/2・3・2 候文/2・3・3 普通文
2・4 書記言語としての拡張訓読文と標準日本語の位置の違い
3 読文の終焉
3・1 訓読文の特質と限界
3・2 書記言語の取り替え
第6章 漢語が仲立ちした書記言語の交替
1 訓読文と標準日本語の漢語使用調査
1・1 訓読文と標準日本語の関係
1・2 漢語の使用率について
1・2・1 漢語の分布
1・2・2 漢語使用率に関する先行研究
2 訓読文における漢語の使用率の高さ
2・1 訓読文と漢語の関係
2・2 訓読文における漢語の使用率調査
2・3 近代の訓読文における漢語使用率の高さ
3 近代の標準日本語における漢語使用
3・1 標準日本語について
3・2 標準日本語における漢語の使用率調査
3・3 標準日本語の漢語使用率の高さ
4 調査結果のまとめ
終章 まとめとひとつの問題提起
1 まとめおよび本書の意義
2 ひとつの問題提起
2・1 本書の内容と漢文教育
2・2 漢文教育の問題点1 名称の問題
2・3 漢文教育の問題点2 訓読漢文と書き下し文の違いに関する問題
2・4 漢文教育の問題点3 ひとつの訓読法を絶対視しすぎる問題
注
参考文献
索引