先代旧事本紀論 
史書・神道書の成立と受容 
工藤浩 編

2019年8月31日発行
上代文学会 監修
定価:8,800円(10%税込)*品切れ
A5判・上製・308頁
ISBN:978-4-909832-09-2

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内容紹介著者紹介目次書評

偽書には偽書の価値がある。

九世紀初頭に編纂された歴史書・神道書でありながら、不審箇所が多く、近世以降は偽書として低く見られてきた『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』。
記・紀神話享受史の研究において近年脚光を浴びる書をここに再評価。
日本文学・日本史学・神道学・日本語学の四領域から迫る!

『先代旧事本紀』研究のための基本文献リスト収載。

【好評既刊】
工藤浩・松本直樹・松本弘毅 校注・訳『先代旧事本紀注釈』(定価17,600円、2022年2月刊)

工藤 浩(くどう・ひろし)
日本工業大学教授・『新撰龜相紀の基礎的研究』『氏族伝承と律令祭儀の研究』

松本 直樹(まつもと・なおき)
早稲田大学教授・『古事記神話論』『出雲国風土記注釈』『神話で読みとく古代日本』

小村 宏史(おむら・ひろし)
沼津工業高等専門学校准教授・『古代神話の研究』「垂仁記霊果将来説話の意義 ―「常世国」よりもたらされたもの―」「神話と現実 ―神話テキストへの接近― 」

伊藤 剣(いとう・けん)
明治大学准教授・『日本上代の神話研究』「『出雲国風土記』の『日本書紀』受容態度」「「現伝『出雲国風土記』の成立をめぐって」

鈴木 正信(すずき・まさのぶ)
文部科学省教科書調査官・『日本古代氏族系譜の基礎的研究』『大神氏の研究』『日本古代の氏族と系譜伝承』

渡邉 卓(わたなべ・たかし)
國學院大學准教授・『『日本書紀』受容史研究』「『釈日本紀』にみる『古事記』の価値」「武田祐吉の学問態度と〈万葉精神〉」

西岡 和彦(にしおか・かずひこ)
國學院大學教授・『近世出雲大社の基礎的研究』『神道の格言―「かぎろい」抄(五)―』『建国の使命―「大祓詞」の神学―』

福田 武史(ふくだ・たけし)
武蔵大学准教授・「『日本書紀』の訓読をめぐって」「李嶠百詠詩題注における和名抄の利用」

松本 弘毅(まつもと・ひろき)
早稲田大学非常勤講師・『古事記と歴史叙述』「『先代旧事本紀』兼永本と兼右本の関係」

奥田 俊博(おくだ・としひろ)
九州女子大学教授・『古代日本における文字表現の展開』「『万葉集』における反復表現の表記―変字法とその周辺―」

小林 真美(こばやし・まさみ)
東京理科大学専任講師・『『古事記』諸本における受容と展開の研究』「折口信夫と山中共古―接点と影響を中心に―」

星 愛美(ほし・まなみ)
奈良女子大学大学院生・「『先代旧事本紀』の史書性―系譜をめぐって」「『先代旧事本紀』における即位称元」

はじめに…工藤浩

Ⅰ 構想と神話・伝説・系譜

1 神から人への「系統史」―『先代旧事本紀』の構想と構成―…松本直樹
はじめに
一 「神代史」各巻の内容
二 「神代史」各巻の構想
三 「神代史」の構造

2 『先代旧事本紀』における出雲系神格の位置―「天璽瑞宝十種」の造形に関する一試案―…小村宏史
一 瑞宝十種と鎮魂祭、およびウマシマヂ
二 「蛇比礼」「蜂比礼」「品物比礼」―オホナムチとオホモノヌシ
三 「生玉」「足玉」「道反玉」「死反玉」―ヌナカハヒメとタケミナカタ
四 「瀛津鏡」「辺津鏡」―宗像・賀茂の神
五 「八握剣」について
おわりに

3 地祇本紀のオホナムチ―系譜の分析を中心に―…伊藤剣
一 はじめに
二 大年神流の神統譜
三 『先代旧事本紀』のオホナムチ㈠―オホナムチの亦名
四 『先代旧事本紀』のオホナムチ㈡―大三輪神との一体化
五 『先代旧事本紀』のオホナムチ㈢―系譜条にみる倭の神としての性格
六 杵築大社の祭神
七 オホナムチを倭の神にした意図
おわりに

4 「天孫本紀」所載系譜をめぐって…工藤浩
一 アメノカゴヤマ系譜
二 ウマシマヂ系譜
三 ニギハヤヒ系譜への統合
四 「天孫本紀」所載系譜の受容
おわりに

5 「国造本紀」研究の現状と課題…鈴木正信
はじめに
一 江戸時代の研究
二 幕末から戦前までの研究
三 戦後の研究
四 今後の展望
おわりに

コラム 可美真手命とその銅像―明治天皇が求めた臣下の理想像小林真美
コラム 『先代旧事本紀』が拓くヤマトタケルの子・武田王の伝説小林真美
コラム 記述の小異と皇位継承へのまなざし星愛美

Ⅱ 神道思想と享受

6 『先代旧事本紀』と祭祀―『釈日本紀』にみる呪力の受容―…渡邉卓
はじめに
一 『釈日本紀』「開題」引用の『先代旧事本紀』
二 『釈日本紀』「述義」引用の『先代旧事本紀』
三 祭祀文献としての認識
四 呪力の移動
おわりに

7 山崎闇斎と『先代旧事本紀』―基礎的考察―…西岡和彦
はじめに
一 闇斎の神書評価と『先代旧事本紀』の位置
二 闇斎が用いた『先代旧事本紀』の底本とその校訂
三 神書『先代旧事本紀』と注釈書『旧事大成経』
おわりに

8 学問・注釈の世界における『先代旧事本紀』…福田武史
はじめに
一 『令集解』引用文存疑
二 『先代旧事本紀』による『日本書紀』注釈―『釈日本紀』
おわりに

コラム アーネスト・サトウが手にした『先代旧事本紀』…小林真美

Ⅲ 写本と表記

9 『先代旧事本紀』の諸本研究をめぐる現状と課題…松本弘毅
はじめに
一 諸本一覧とこれまでの研究
二 想定諸写本系統図/各写本について(一) ⑨石川忠総本・⑩卜部一本
三 各写本について(二)卜部兼右本
四 各写本について(三)卜部兼右本系諸本
五 各写本について(四)その他の兼永本の転写本
六 未検討写本
七 行方不明写本
おわりに―旧事本紀の写本系統を追究する意味

10 『先代旧事本紀』における熟字と単漢字―「誕生」と「生」をめぐって―…奥田俊博
一 問題の所在
二 『先代旧事本紀』の「誕生」の用法と『日本書紀』の対応記事
三 漢語「誕生」の用法と『先代旧事本紀』
四 『先代旧事本紀』における「誕生」と「生」

コラム 今後の研究課題について…工藤浩

『先代旧事本紀』研究のための基本文献リスト

あとがき…工藤浩

「古文書研究」91号(2021年6月)に書評掲載されました。
【評者 松本郁代氏】

「その最大の見どころは、やはり、近世以降「偽書説」として斥けられた『旧事紀』を切り捨てることなく、「偽」の意味とその仕組みを享受史のなかで相対化し、さらに課題を提示した点にある。」