もの狂いの人々
古典文学に見る異形のヒロイン
小林とし子 著

2021年7月上旬刊行予定
定価:2,970円(10%税込)
A5判・上製カバー装・408頁
ISBN:978-4-909832-44-3

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内容紹介著者紹介目次

人間の
もの狂いを
描いているのが
物語なのだ。

「あのときの自分は、おかしかった」と思い返すことが、誰でも一度や二度はあるかもしれない。このもの思いやもの狂いを描いているのが「物語」なのだ、という視点から、古典をひもといてゆく。

『源氏物語』がわれわれを引きつけるのは非日常性であり、さすらう世界を生きる異形の登場人物、六条御息所の存在である。そこに描かれているのはもの狂いの果てにある過酷な現実を描くリアリズムの世界。それは虚構ではなく、実はいまを生きるわれわれの日常であり、現代の文学に、演劇の世界に、さらにはアニメの世界に物語は生き続けている。
『竹取物語』に始まり、『源氏物語』、などの数々の作品を究極のかたちで継承したのが世阿弥の能の世界だった。
さらに能作品はもの狂いの果てにあるものまで私たちに見せてくれる。

「もの狂いとなった人の魂は、この世の体制の中にはおさまらない、だからこそこの世ならぬ世界を求めてふらふらとさ迷い出していく。つまり、さすらいとは、この世の規範から外れた世界を生きることであり、その姿はこの世ならぬもの、つまり異い 形ぎょうのものだった。『源氏物語』の六条御息所はもの思いのあまりにもの狂いとなり、そのはてにもののけ・怨霊という異形のものとなってさすらわざるをえなかった。」……「序」より

小林 とし子(こばやし・としこ)
昭和29年(1954)3月 大阪市に生まれる。
大阪府立北野高等学校、京都女子大学文学部国文学科卒業後、大阪府立高校の教員になる。
昭和59年(1984)、栃木県宇都宮市に住む。
昭和63年(1988)宇都宮大学教育学部大学院修士課程修了。
平成6年(1994)学習院大学大学院人文科学研究科国文学専攻博士後期課程満期退学。
現在、作新学院大学で非常勤講師。
日本文学協会会員。

【著書・論文】
歌集『漂泊姫』 2000年 砂子屋書房
『扉を開く女たち─ジェンダーからみた短歌史』阿木津英・内野光子との共著 2001年 砂子屋書房
「性を売る女の出現─平安・鎌倉時代の遊女」(『買売春と日本文学』所収 2002年 東京堂出版)
『さすらい姫考─日本古典からたどる女の漂泊』 2006年 笠間書院 (2006年度 女性文化賞受賞)
『女神の末裔─日本古典文学からたどる〈さすらい〉の生』 2009年 笠間書院
『翁と嫗の源氏物語』 2011年 笠間書院
『姫君考─王朝文学から見たレズ・ソーシャル』 2015年 笠間書院
歌集『曙町夢譚』 2016年 薫風社

序  もの思いからもの狂い、そしてさすらいへ

Ⅰ 『源氏物語』六条御息所論—もの狂いの原点として—

はじめに—もの思う女からもの狂いの女へ―
1  もののけ現象  その1
 六条御息所の謎―存在の不可思議さ―
 六条御息所の非正統性―葵上に対抗する精神―
 葵上に憑りついたもののけの現象
 光源氏的世界

2 もののけ現象 その2
 もののけ発動の兆し
 もの思う女─紫上―
 もののけ発動に至るまで
 女の哀しみとしてのもののけ
 もののけの出現─紫上に―
 もののけの出現─女三宮に―
3  源氏物語におけるもののけ現象─物語に投げられた謎―
 夕顔巻の怪奇現象と〈もの〉が発した言葉の謎
 六条御息所の実行犯的役割とその構築

Ⅱ 『源氏物語』末摘花論―異形の女神―

はじめに―光源氏の世界[六条院・二条院・二条東院]―
 末摘花の姫君性─末摘花巻から―
 末摘花の姫君性─蓬生巻から―
 滅びの精神
 末摘花の変貌─女神生成―
 常陸宮邸の復活
 二条東院における末摘花
おわりに─皇孫の鬼―

Ⅲ 『源氏物語』花散里論―乙姫の宿世を生きる―

はじめに
物語理論による考察
 花散里がオトヒメであること
 神話世界のオトヒメ
 紫上との対の関係
 紫上のオトヒメ性、あるいはヒメ性
オトヒメ理論を踏まえての花散里考察
 光源氏をめぐる女君の一人として
 須磨退去の折に
 光源氏帰京後
 宿世を生きる
 六条院世界を生きる
 認識者として
 光源氏との夫婦関係
 その後の花散里

Ⅳ 『とはずがたり』後深草院二条論―さすらいの母―

 後深草院二条のさすらいの根拠―子どもの事―
 〈母と子〉の物語─大念仏供養の世界から―
 謎の子―X
 〈有明の月〉と二条の物語─「源氏取り」から―
   その1
   その2
 出雲路での再会
 巻三の展開
 〈雪の曙〉との間に生まれた女子の問題
 〈雪の曙〉との恋─「源氏取り」「伊勢物語取り」―
 秘密の子の出産
 二条の娘は亀山院后昭訓門院瑛子か
 〈源氏取り〉の世界から─夕顔の娘、玉鬘―
 おわりに

Ⅴ もの狂い考―能の〈もの狂いの女〉―

はじめに─世阿弥の〈神がかりによるもの狂い〉排除の思想―
 憑依を演じる
 もの狂いとは
 もの狂いの標識
 もの狂いの母─能「三井寺」―
 恋心・やむにやまれぬもの狂い
 能「班女」
 能「花筐」
 子を探し求める女芸能者─能「百万」―
おわりに─男のもの狂い─

Ⅵ 世阿弥レポート  1~6

Ⅶ その後の世阿弥 もの狂いの果てにあるもの

 世阿弥の時代─立ち顕れる死者たち─
 能「砧」
 能「隅田川」

 あとがき─古代的なるものを探して―