安藤野雁追跡
幕末万葉集研究者の生と死
遠藤宏 著
2022年4月30日発行
定価 15,950円(10%税込)
A5判・上製・508頁
ISBN:978-4-909832-56-6
野雁をご存知だろうか?
安藤野雁を追跡すること50年。遂に待望の「野雁の生涯と全業績」が明かされる。
口伝による奇行が語られているが、本書は、文字資料に基づいた確かな野雁の生涯を辿る。
地べたを這い廻りながらも畢生の研究『万葉集新考』上梓の夢を追っていた〈野の雁〉。
刊行直前まで進んでいたが、上梓に至らず53歳で無冠の生涯を閉じた野雁。
新資料「歌集『旅路の草の葉』『野雁集』(常葉本)」(翻刻)。「著作一覧」「略年譜」附載。
「……野雁は其性不羈質直、常に破れたる衣をまとひ縄を帯にし、雨中草履をうがち、雨にぬれつゝ、ゆくやうの人にて、平素酒を嗜む事甚しく、逸事奇話少なからず。其畢生の事業は万葉集新考の著作にして、旅中も常に筆を放たざりしと云。」(佐佐木信綱『野雁集』「解題」より)
遠藤 宏(えんどう ひろし)
はじめに──凡例にかえて
序章
第一部 野雁追跡
第一章 桑折─歌との出合い─(誕生~二十三歳)
第二章 転任─失意への転換─(二十三歳~二十七歳)
第三章 放浪─江戸・岩淵・中津川─(二十八歳~四十八歳頃)
第四章 熊谷─『万葉集新考』の上梓計画と死─(四十九歳~五十三歳)
第五章 追補の章
第一節 中津川─間家滞留─
第二節 『佐野定経(角田桜岳)日記』(その1)─富士宮、嘉永二年─
第三節 『佐野定経(角田桜岳)日記』(その2)─江戸、嘉永七年─
第四節 『佐野定経(角田桜岳)日記』(その3)─江戸、嘉永七年(続)─
第五節 『佐野定経(角田桜岳)日記』 (その4)─江戸・総州成田、安政二年他─
第六節 『佐野定経(角田桜岳)日記』(その5)─江戸、野雁周辺の人々─
第七節 『安藤政昭日記』(その1)─郷里・江戸の野雁─
第八節 『安藤政昭日記』(その2)─郷里・江戸の野雁(続)─
第九節 熊谷─『立庵日録』と「門人録」─
第二部 歌集『旅路の草の葉』『野雁集』(常葉本)翻刻
一 安藤野雁『旅路の草の葉』
二 安藤野雁『野雁集』(常葉本)
第三部 野雁断想
一 野雁詠断想
二 安藤野雁発掘遍歴略記─裏話風に─
附録
一 安藤野雁著作一覧
二 安藤野雁略年譜
三 索引(人名)
あとがき
■「国語と国文学」2024年1月号にて紹介されました。【鈴木健一氏】
「近世和歌史や万葉注釈史に、野雁の名を加えることで、わたしたちはさらに豊かなものを手にすることができるだろう。」
■「萬葉」第236号(2023年10月)にて紹介されました。【吉岡真由美氏】
「幕末という動乱の時代を、歌人として、また万葉集研究者として生きた野雁の生涯について、資料に基づき丹念に繙かれている。」
■「成蹊國文」第56号(2023年3月)にて紹介されました。【鈴木亮氏】
「野雁は、陸奥国伊達郡桑折の代官所役人の家に生れ、名を謙次、政美、通称を刀禰と言ふ。江戸に出て塙忠宝に学び、その後諸国を放浪し、熊谷にて客死。和歌は村田春門、本居大平の教へを受け、著すところに『万葉集新考』(未完)、『野雁集』等がある。」
■福島民友新聞(2022年5月25日付)にて紹介されました。
「……ドラマチックに漂白を重ねた人物の人生と作品の魅力について、長い年月を費やし先人の研究やゆかりの地に残る資料を読み込み、さらには新資料の発掘や、子孫からの聞き取りなどで、新しい知見を加えまとめた労作だ。」