平家物語の表現世界
諸本の生成と流動
原田敦史 著
2022年12月15日発行
定価 9,900円(10%税込)
A5判・上製・416頁
ISBN:978-4-909832-67-2
文学研究の本筋に立ち返って読み直す。
流動の文芸たる『平家物語』の世界の総体と、その本質とは。
『平家物語』を中心に、『保元物語』『平治物語』『承久記』等、多彩な諸本からなる軍記物語本文の具体相を示す。
「作品自体を読み解いていくような論が、もっと書かれてもよいのではないか。そのほうが文学研究らしいだろう。その先に、もっと他諸本の描く世界にも眼を広げてゆくことができるのではないか。……いかなる道筋を通っていかなる表現世界が作られてきたのか。それは豊穣な諸本群の中でどのような位相にあるのか。そこにこだわることで、見えてくる問題はまだあるはずだ。だから本書では、常に作品の本文に向かうところから、諸本の考察を始めたい。」(「序論」より)
原田 敦史(はらだ あつし)
序論
第一章 読み本系『平家物語』論
第一節 延慶本〈殿上闇討〉考
一 延慶本の問題点
二 本節の着眼点
三 「サテヤミヌ」の問題
四 延慶本の〈殿上闇討〉
五 結び
第二節 延慶本〈壇の浦合戦〉本文考
一 教経の最期
二 語り本の叙述
三 延慶本の問題点(一)
四 延慶本の問題点(二)
五 延慶本の特質
第三節 『源平盛衰記』形成過程の一断面
一 忠盛の武勇
二 頼政の鵼退治
三 忠盛と頼政(一)―女性をめぐる説話―
四 忠盛と頼政(二)―説話の重層―
五 清盛へ
第四節 源頼政挙兵の発端―覚一本と『源平盛衰記』―
一 はじめに
二 覚一本の馬争い説話
三 盛衰記の馬争い説話
四 盛衰記の頼政
五 盛衰記の歴史叙述
六 おわりに
第五節 「小宰相身投」考
一 高野本
二 延慶本
三 読み本系諸本
四 源平盛衰記
第二章 語り本系『平家物語』論
第一節 語り本の形成(一)―「一二之懸」―
一 覚一本の問題点
二 中院本の問題点
三 語り本の淵源
四 延慶本の位置
五 結び
第二節 語り本の形成(二)―一の谷合戦譚の諸問題―
一 問題の所在
二 平家の陣容
三 坂落としの前後
四 落足
五 敦盛最期
第三節 語り本の形成(三)―「赦文」と「大坂越」―
一 はじめに
二 「赦文」の問題
三 『源平盛衰記』の本文
四 語り本の形成
五 「大坂越」の問題
六 『源平盛衰記』との関係
七 長門本・松雲本
八 おわりに
第四節 富士川合戦譚考
一 はじめに
二 問題の所在
三 頼朝挙兵譚と富士川合戦譚
四 実盛の怒り
五 将門追討の故事
六 おわりに
第五節 義仲関連記事の検討
一 はじめに
二 義仲と頼朝
三 延慶本の義仲(一)
四 延慶本の義仲(二)
五 覚一本の義仲
六 覚一本の世界
第六節 建礼門院関連記事の成立と表現
一 灌頂巻成立論から
二 延慶本は何を描いたか(一)
三 延慶本は何を描いたか(二)
四 語り本の世界
五 灌頂巻
第七節 屋代本〈大原御幸〉考
一 「御訪」の意味するもの
二 女院と法皇の対峙
三 女院の語り(一)
四 女院の語り(二)
五 屋代本・覚一本の位相
第八節 屋島から壇の浦へ
一 はじめに
二 延慶本『平家物語』
三 語り本の諸相
四 覚一本『平家物語』
五 壇の浦の海
第九節 平重衡
一 内裏女房
二 重衡の道程
三 千手
四 北の方
五 結び
第十節 『平家物語』の「駆武者」
一 平家物語史観
二 文学研究の問題として
三 覚一本の駆武者
四 義仲の最期
五 結び
第三章 『保元物語』『平治物語』『承久記』
第一節 四類本『保元物語』論
一 為朝の登場
二 四類本の為朝
三 為朝と義朝
四 新たな造型
五 結び
第二節 四類本『平治物語』論
一 問題の所在
二 四類本の信頼(一)
三 四類本の信頼(二)
四 運命と応報
五 義朝と義平
六 新たな歴史叙述
七 結び
第三節 慈光寺本『承久記』の一側面
一 誰カ昔ノ王孫ナラヌ
二 御家人者皆傍輩也
三 義時の果報
四 慈光寺本の歴史叙述
五 結び
第四節 流布本『承久記』と前田家本『承久記』の関係
一 問題点の整理
二 流布本本文の問題
三 光季合戦
四 『六代勝事記』との関係
五 結び
第五節 流布本『承久記』の構造
一 『承久記』と『六代勝事記』
二 流布本の論理
三 天命
四 流布本本文の形成過程
五 鎌倉勢の造型
六 結び
結び
初出一覧
あとがき
索引