テロルの女たち 
日本近代文学における政治とジェンダー 
倉田容子 著

2023年2月22日発行
定価 3,960円(10%税込)
A5判・上製・256頁
ISBN:978-4-909832-68-9

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内容紹介著者紹介目次

女性と政治を隔てているものとは何か?

共同体に滅亡をもたらす者、革命家として憲兵の刃に倒れる者、産まれたばかりの我が子を手にかける者……死と暴力にまみれ、恐怖(テロル)の相貌を帯びた女性たちはなぜ描かれたのか。
19、20世紀を生きた作家たち、宮崎夢柳・福田英子・平林たい子・三枝和子の諸作品から、今なお根強く残るジェンダー秩序と、女性表象や女性解放をめぐる問題に鋭く切り込む。

「本書は、政治と女性の関係を問い直す試みであると同時に、〈革命/恐怖の女〉の系譜を照らし出す試みでもある。これらの女性表象が指し示す問題について考え、わたしたちが目指すべき方向を探る手がかりとしたい。」(序章「公/私区分とジェンダー」より)

倉田 容子(くらた・ようこ)

お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。
博士(人文科学)。
現在、駒澤大学文学部教授。
専門は日本近現代文学、フェミニズム批評。
著書に『語る老女 語られる老女―日本近現代文学にみる女の老い』(學藝書林、2010年2 月)、主な論文に「男装少女のポリティクス―一九七〇年代から八〇年代にかけての〈少女を愛する少女〉表象の転換」(西田谷洋編著『文学研究から現代日本の批評を考える―批評・小説・ポップカルチャーをめぐって』ひつじ書房、2017年6月)、「断片化に抗う―『ナチュラル・ウーマン』受容史とクィア・リーディングの行方」(「昭和文学研究」第77 号、2018年9月)、「李琴峰の小説における饒舌と沈黙―『独り舞』を中心として」(「昭和文学研究」第83号、2021年9月)など。

凡例

序章 公/私区分とジェンダー

Ⅰ 自由と女―宮崎夢柳の政治小説

第一章 「佳人」の死―「芒の一と叢」における女性表象
 はじめに
 一 「諸君は此の髑髏の誰れたるを知るか」
 二 勤王志士の系譜
 三 女性像の転換
 おわりに

第二章 土佐を歩く夢柳―初期テクストと土佐自由民権運動の距離
 はじめに
 一 夢柳と土佐自由民権運動
 二 陽暉楼/得月楼
 三 「近水の楼台月の面影」
 四 「芸郡紀遊」
 おわりに

第三章 「鬼啾啾」における「主義」と「私事」
 はじめに
 一 女性像の変遷
 二 公/私区分の再編と「自由」な政治的主体
 三 「私事」としての女権論
 おわりに

Ⅱ 階級と女―福田英子と平林たい子

第四章 「女壮士」の行方―景山英子から福田英子へ
 はじめに
 一 英子をめぐる言説①―崇拝と侮蔑
 二 英子をめぐる言説②―〈公〉か〈私〉か
 三 『妾の半生涯』の同時代的文脈と戦略
 四 「婦人世界」における女性解放論
 おわりに

第五章 「理知」と「意志」のフェミニズム―平林たい子における公/私の脱領域化
 はじめに
 一 「承認」の政治からの再評価と批判
 二 「理知」と「行動への意志」
 三 「施療室にて」
 おわりに

第六章 境界をめぐる物語―平林たい子「夜風」論
 はじめに
 一 公的な活動様式
 二 「身辺的認識」からの脱却
 三 農民文学をめぐる論争
 四 「夜風」
 おわりに

Ⅲ 文化と女―三枝和子のフェミニズム・ディストピア

第七章 亡霊的な「女性原理」―「鬼どもの夜は深い」を中心として
 はじめに
 一 滅亡への志向性
 二 亡霊としての「女性原理」
 三 「鬼どもの夜は深い」
 四 一九八〇年代フェミニズムにおける和子の位相
 おわりに

第八章 「自由」への憧憬と懐疑―『八月の修羅』から『隅田川原』へ
 はじめに
 一 第二波フェミニズムと「自由」
 二 『八月の修羅』
 三 「江口水駅」
 四 「隅田川原」
 おわりに

第九章 友でもなく、敵でもない者
 はじめに
 一 「敵」と「友」の境界線の混乱
 二 「「法」ロゴス」と「エリーニュス」
 三 「幽冥と情愛の契りして」
 おわりに

終章 テロルの女たち

 初出一覧
 あとがき
 索引