人情本入門
天保期、江戸に開花した娯楽小説
武藤元昭監修・木越俊介編
2024年7月10日発行
定価:4,180円(10%税込)
B5判変型・上製・210頁+口絵4頁
ISBN:978-4-909832-90-0
選りすぐり、56作品の魅力を徹底紹介!
人情本は、19世紀日本の総合的な娯楽小説。
庶民の色恋沙汰や都市風俗が盛り込まれ、演劇・音曲、講談・落語、怪談などの要素も含む。
全盛を迎えた天保期以降(1830年〜)の作品から、登場人物やあらすじ、読みどころ、書誌情報を、挿絵図版もふんだんに配して紹介。
幕末へ向かう、不安定な世の中を生きる人々の日常が垣間見える。
武藤 元昭(むとう もとあき)/監修者
1939年生。青山学院大学名誉教授。
京都大学文学部、東京大学大学院博士課程単位取得済退学。
青山学院大学教授、同学長(2003〜2007年)。2009年より静岡英和学院大学学長を経て、学校法人静岡英和学院理事長・院長(2014年〜2016年)。
編著書に、『花名所懐中暦』(太平書屋、1991年)、『恐可志』(太平書屋、1993年)、『人情本集』(国書刊行会〈叢書江戸文庫〉、1995年)、『人情本の世界─江戸の「あだ」が紡ぐ恋愛物語─』(笠間書院、2014年) などがある。
木越 俊介(きごし しゅんすけ)/編者
1973年生。国文学研究資料館教授。
神戸大学大学院博士課程修了。
著書に、『江戸大坂の出版流通と読本・人情本』(清文堂出版、2013年)、『羇旅漫録』(校註、平凡社〈東洋文庫〉、2022 年)、『知と奇でめぐる近世地誌─名所図会と諸国奇談─』(平凡社、2023年)などがある。
伊藤 美幸(いとう みゆき)/執筆
総合研究大学院大学博士課程。
黒澤 暁(くろさわ さとり)/執筆
関西大学非常勤講師。
鈴木 圭一(すずき けいいち)/執筆
2019年逝去。
崔 泰和(ちぇ てーふぁ)/執筆
(韓国)国立群山大学校教授。
長田 和也(ながた かずや)/執筆
公益財団法人五島美術館大東急記念文庫学芸員。
檜山 裕子(ひやま ゆうこ)/執筆
立教女学院中学校・高等学校教諭。
藤井 史果(ふじい ふみか)/執筆
大東文化大学専任講師。
二又 淳(ふたまた じゅん)/執筆
(中国)四川外国語大学准教授。
松永 瑠成(まつなが りゅうせい)/執筆
国文学研究資料館特任助教。
山杢 誠(やまもく まこと)/執筆
元静岡県立高等学校教諭。
人情本を読むために
1【人情本とはなにか】
人情本と他ジャンルの接点・人情本の型(パターン)について
人情本の諸要素/商家繁栄譚
2【人情本の第一人者】
為永春水について
出自・著作活動/講釈師/転機/梅暦以降の作品の展開/交流/筆禍
3【人情本の作られ方】
合作で作られた人情本―為永連(工房)とは何か?―
為永連/合作制の実体/『春色梅児誉美』以降
4【人情本の読まれ方1 内容】
江戸時代のトレンディドラマ、春水人情本
二百年前のトレンディドラマ/二百年前のPP
二百年前のバックグラウンドミュージック(BGM)/おわりに
5【人情本の読まれ方2 方法】
貸本文化と人情本
貸本という文化/江戸時代の貸本屋/貸本文化のなかの人情本
6【幕末から明治における人情本の変質】
メディアの変遷と新聞小説の出現―山々亭有人と粋興連を例に―
明治の人情本作者たち/人情本に登場する粋興連/おわりに
7【近代における人情本受容】
人情本と近代の作家たち
人情本の「人情」とは/坪内逍遙と人情本/二葉亭四迷と人情本
子規・篁村と人情本/紅葉・硯友社と人情本/鷗外・荷風と人情本
鈴木圭一旧蔵コレクションからみる一九世紀書籍文化の深淵
はじめに/整理作業の方向性と現状/コレクションの全体像
「読むこと」と「写すこと」の書籍享受/おわりに―資料整理を終えての感想―
人情本【作品選】
01 秋雨夜話(あきさめばなし)
02 吾妻の春雨(あずまのはるさめ)
03 仇競今様櫛(あだくらべいまようぐし)
04 阿屋女草(あやめぐさ)
05 いとやなぎ
06 妹背鳥(いもせどり)
07 いろは文庫(いろはぶんこ)
08 祝井風呂時雨傘(いわいふろしぐれのからかさ)
09 鶯塚千代廼初声(うぐいすづかちよのはつこえ)
10 梅之春(うめのはる)
11 縁結娯色糸(えんむすびごしきのいと)
12 応喜名久舎(おきなぐさ)
13 女小学(おんなしょうがく)
14 仮名文章娘節用(かなまじりむすめせつよう)
15 閑情末摘花(かんじょうすえつむはな)
16 恋の花染(こいのはなぞめ)
17 黄金菊(こがねぎく)
18 心意気(こころいき)
19 秋色絞朝顔(貞操園朝顔)(しゅうしょくしぼりあさがお)
20 春暁八幡佳年(しゅんぎょうはちまんがね)
21 春秋二季種(しゅんじゅうふたきぐさ)
22 春色鶯日記(しゅんしょくうぐいすにっき)
23 春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)
24 春色梅の辻占(しゅんしょくうめのつじうら)
25 春色梅美婦禰(しゅんしょくうめみぶね)
26 春色英対暖語(しゅんしょくえいたいだんご)
27 春色江戸紫(しゅんしょくえどむらさき)
28 春色恋廼染分解(しゅんしょくこいのそめわけ)
29 春色袖之梅(しゅんしょくそでのうめ)
30 春色辰巳園(しゅんしょくたつみのその)
31 春色伝家の花(しゅんしょくでんかのはな)
32 春色初旭の出(しゅんしょくはつひので)
33 春色籬の梅(しゅんしょくまがきのうめ)
34 春色湊の花(しゅんしょくみなとのはな)
35 春色恵の花(しゅんしょくめぐみのはな)
36 春色雪の梅(しゅんしょくゆきのうめ)
37 春色連理の梅(しゅんしょくれんりのうめ)
38 清談松之調(せいだんまつのしらべ)
39 其小唄恋情紫(そのこうたひよくのむらさき)
40 園の花(そののはな)
41 玉兎(たまうさぎ)
42 娜真都翳喜(たまつばき)
43 貞操婦女八賢誌(ていそうおんなはっけんし)
44 毬唄三人娘(てまりうたさんにんむすめ)
45 花筺(はながたみ)
46 花暦封じ文(はなごよみふうじぶみ)
47 花名所懐中暦(はなめいしょかいちゅうごよみ)
48 花物語(はなものがたり)
49 春雨日記(はるさめにっき)
50 春告鳥(はるつげどり)
51 春の若草(はるのわかくさ)
52 風俗吾妻男(ふうぞくあずまおとこ)
53 娘消息(むすめしょうそく)
54 處女大幸喜(むすめたいこうき)
55 娘太平記操早引(むすめたいへいきみさおのはやびき)
56 柳横櫛(やなぎのよこぐし)
【作品選】参考画像
54『處女大幸喜』画像集
【作品選】参照文献一覧
人情本関連文献(二〇一〇年以降)
参考年表
あとがき
書肆索引/作者・画工名他索引