源氏物語絵巻の世界
〈図鑑 モノから読み解く王朝絵巻 第1巻〉
倉田実 著

2024年4月30日発行
定価:2,750円(10%税込)
A5判・並製・304頁
ISBN:978-4-909832-96-2

各種オンライン書店での購入

 

内容紹介①内容紹介②著者紹介目次書評・紹介

絵巻に描かれている人物・衣裳・小物・家具・建築物など……すべての名前が分かる!

絵巻鑑賞のために知っておいたほうがよい約束事も、やさしく解説。
見方がわかると、絵巻を見るのが一層楽しくなります。

【本書の特長】
・画面の構図に込められた意味や意義を徹底解説。
・原典を忠実に再現した線描画と、3色刷りの分類番号で、抜群の見やすさ。
・平安時代の文学、文化、生活が理解できる。

・絵の説明となる「詞書」(ことばがき)の現代語訳も収録。
・事物の画像を検索、確認できる「絵引索引」つき。辞書的説明も付いて難語句も明解。

以降、続刊(全3冊)
2 寝殿造の仕組みと宮中の行事
3 平安時代の信仰と暮らし


本書は、三省堂ホームページのワードワイズ・ウェブに、2013年4月から2019年12月まで、79回にわたって連載された「絵巻で見る 平安時代の暮らし」に加筆し、再構成したものです。


髙樹のぶ子氏推薦!——平安絵巻への最高の案内本です。

 平安時代に世間の目が向くのは素晴らしいことですが、そこに見える世界は、実際に千年昔に存在していたのかどうか。
 それを確かめるには、絵巻物の情報に頼るしかありません。残された文字情報も勿論大事ですが、目から入るものは、それだけで身近に感じられるものなのです。
 この時代から現代まで残されている言葉は、沢山あります。けれど、当時と今では全くの別物であることは多々あります。たとえば「簀の子」という言葉は今も使われていますが、平安時代の簀の子は、濡れ縁のような寝殿造りの外周を指しました。絵巻物を見ることで、それが簀の子であることを初めて知るのです。
 私は平安時代の人々の生活を知るには、まず絵巻物を見る愉しみから始めるのが良いと思っていますが、それだけでは足りません。そこに描かれた建物や装束、日々の暮らしの物々に触れ、その名称を正しく知ることで、ようやくこの時代に近づき、味わうことが出来るのです。
 この「図鑑 モノから読み解く王朝絵巻」こそ、平安絵巻への最高の案内本です。
 この図鑑を片手に絵巻物を見れば、人物は動きだし、牛車はギシギシと音を立て、一枚の絵に隠された物語や人間関係をも想像させます。気がつけば平安歴史への関心も知識も、大きく膨らんでいるに違いありません。


原典を忠実に再現した線描画で場面を味わってください。
原典では破損などによりモノの輪郭が不鮮明な場合も、線描ではっきりと示すことができています。
ただし、剥落や退色などで線描できない部分は、むやみな再現をしていません。
あくまでも絵巻の現状を大切にしています。


絵巻に描かれているモノすべてに記号を付けて、名称を示します。


絵巻の場面や人物、事物について解説。画面の趣向や構図も確認します。

倉田 実(くらた みのる)

昭和学院短期大学専任講師、大妻女子大学文学部教授を経て、現在、大妻女子大学名誉教授。
紫式部学術賞・日本庭園学会賞受賞。

著書◉
『紫の上造型論』(新典社、1988年6月)、『「わが身をたどる表現」論 源氏物語の膠着語世界』 (武蔵野書院、1995年11月)、『狭衣の恋』(翰林書房、1999年11月)、『王朝摂関期の養女たち』(翰林書房、2004年11月)、『蜻蛉日記の養女迎え』(新典社、2006年9月)、『王朝の恋と別れ 言葉と物の情愛表現』(森話社、2014年11月)、『庭園思想と平安文学 寝殿造から』(花鳥社、2018年11月)など。
共著◉
『伊勢集全注釈』(角川書店、2016年11月)、『拾遺和歌集』(岩波文庫、2021年12月)など。
編著◉
『王朝文学と建築・庭園』(平安文学と隣接諸学1、竹林舎、2007年5月)、『現代文化と源氏物語』(講座源氏物語研究 第九巻、おうふう、2007年10月)、『王朝人の婚姻と信仰』(森話社、2010年5月) 、『平安大事典 図解でわかる『源氏物語』の世界』(朝日新聞出版、2015年4月)など。
共編著◉
『源氏物語の鑑賞と基礎知識 空蝉』(至文堂、2001年6月)、『王朝文学と交通』(平安文学と隣接諸学7、竹林舎、2009年5月)、『王朝文学文化歴史大事典』(笠間書院、2011年11月)、『王朝びとの生活誌 『源氏物語』の時代と心性』(叢書・文化学の越境19、森話社、2013年3月)、『三省堂全訳読解古語辞典 第五版』(三省堂、2017年10月)、『狭衣物語の新世界』(知の遺産シリーズ6、武蔵野書院、2019年2月)など。

はじめに

序 絵巻の描かれ方・大和絵の技法

Ⅰ 『源氏物語絵巻』を読み解く


    『源氏物語』登場人物系図
物語第一部 若き日の恋

 1 『源氏物語絵巻』「蓬生」段
    荒廃した末摘花邸に訪れた光源氏
 2 『源氏物語絵巻』「関屋」段
    逢坂の関での光源氏と空蝉のすれ違い
物語第二部 家庭の悲劇

 3 『源氏物語絵巻』「柏木(一)」段
    愛娘女三宮を見舞う朱雀院
 4 『源氏物語絵巻』「柏木(二)」段

    病床の柏木を見舞う夕霧
 5 『源氏物語絵巻』「柏木(三)」段

    薫の五十日の祝
 6 『源氏物語絵巻』「横笛」段
    赤子の夜泣きをあやす雲居雁
 7 『源氏物語絵巻』「鈴虫(一)」段

    念誦堂の女三宮
 8 『源氏物語絵巻』「鈴虫(二)」段

    秘密の親子の対面
 9 『源氏物語絵巻』「夕霧」段
    夕霧にきた文を奪う雲居雁
 10 『源氏物語絵巻』「御法」段
    紫上の最期
物語第三部 匂い薫る公達の恋

 11 『源氏物語絵巻』「竹河(一)」段
    薫の玉鬘邸訪問
 12 『源氏物語絵巻』「竹河(二)」段

    玉鬘の娘姉妹の囲碁とかいま見
 13 『源氏物語絵巻』「橋姫」段
    大君・中君姉妹をかいま見る薫
 14 『源氏物語絵巻』「早蕨」段
    中君の京に移る支度
 15 『源氏物語絵巻』「宿木(一)」段

    今上帝と薫の囲碁
 16 『源氏物語絵巻』「宿木(二)」段

    匂宮と六の君との婚姻四日目の昼間
 17 『源氏物語絵巻』「宿木(三)」段

    琵琶を弾く匂宮と中君
 18 『源氏物語絵巻』「東屋(一)」段

    物語絵を見る浮舟
 19 『源氏物語絵巻』「東屋(二)」段

    三条の浮舟の家に訪れた薫

Ⅱ 『紫式部日記絵巻』を読み解く


    『紫式部日記絵巻』人物関係系図
 20 『紫式部日記絵巻』五島美術館本第二段
    敦成親王五十日の祝〈1〉

 21 『紫式部日記絵巻』大倉家本断簡
    敦成親王五十日の祝〈2〉


Ⅲ 絵巻の詞書本文

Ⅳ 絵巻解説

あとがき

絵引索引
事項索引

■「日本経済新聞」読書面「あとがきのあと」(インタビュー記事)に掲載されました(2024年8月17日)。

「「モノは物を言う」平安絵巻の深遠 名前から場面解説」


■「四国新聞」(2024年8月5日)に「ミニ書評」が掲載されました。

「絵画部分に細かく注釈を入れ、何を読み取るべきかをビジュアルで示してくれるので、初心者にも分かりやすい。」