平安時代の信仰と暮らし
〈図鑑 モノから読み解く王朝絵巻 第3巻〉
倉田実 著

2024年7月30日発行
定価:3,300円(10%税込)
A5判・並製・352頁
ISBN:978-4-909832-98-6

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内容紹介①内容紹介②著者紹介目次書評・紹介

絵巻に描かれている人物・衣裳・小物・家具・建築物など……すべての名前が分かる!

絵巻鑑賞に対する図説入門書として、第三巻では、
神社の祭、寺院への参籠祈願、信仰にまつわる旅、庶民の住まいと暮らしぶり、庶民の遊び
を扱います。

【本書の特長】
・画面の構図に込められた意味や意義を徹底解説。
・原典を忠実に再現した線描画と、3色刷りの分類番号で、抜群の見やすさ。
・平安時代の文学、文化、生活が理解できる。
・絵の説明となる「詞書」(ことばがき)の現代語訳も収録。
・事物の画像を検索、確認できる「絵引索引」つき。辞書的説明も付いて難語句も明解。

(全3冊)
1 源氏物語絵巻の世界
2 寝殿造の仕組みと宮中の行事


本書は、三省堂ホームページのワードワイズ・ウェブに、2013年4月から2019年12月まで、79回にわたって連載された「絵巻で見る 平安時代の暮らし」に加筆し、再構成したものです。


髙樹のぶ子氏推薦!——平安絵巻への最高の案内本です。

 平安時代に世間の目が向くのは素晴らしいことですが、そこに見える世界は、実際に千年昔に存在していたのかどうか。
 それを確かめるには、絵巻物の情報に頼るしかありません。残された文字情報も勿論大事ですが、目から入るものは、それだけで身近に感じられるものなのです。
 この時代から現代まで残されている言葉は、沢山あります。けれど、当時と今では全くの別物であることは多々あります。たとえば「簀の子」という言葉は今も使われていますが、平安時代の簀の子は、濡れ縁のような寝殿造りの外周を指しました。絵巻物を見ることで、それが簀の子であることを初めて知るのです。
 私は平安時代の人々の生活を知るには、まず絵巻物を見る愉しみから始めるのが良いと思っていますが、それだけでは足りません。そこに描かれた建物や装束、日々の暮らしの物々に触れ、その名称を正しく知ることで、ようやくこの時代に近づき、味わうことが出来るのです。
 この「図鑑 モノから読み解く王朝絵巻」こそ、平安絵巻への最高の案内本です。
 この図鑑を片手に絵巻物を見れば、人物は動きだし、牛車はギシギシと音を立て、一枚の絵に隠された物語や人間関係をも想像させます。気がつけば平安歴史への関心も知識も、大きく膨らんでいるに違いありません。

図版は第1巻のものです。


原典を忠実に再現した線描画で場面を味わってください。
原典では破損などによりモノの輪郭が不鮮明な場合も、線描ではっきりと示すことができています。
ただし、剥落や退色などで線描できない部分は、むやみな再現をしていません。
あくまでも絵巻の現状を大切にしています。


絵巻に描かれているモノすべてに記号を付けて、名称を示します。


絵巻の場面や人物、事物について解説。画面の趣向や構図も確認します。

倉田 実(くらた みのる)

昭和学院短期大学専任講師、大妻女子大学文学部教授を経て、現在、大妻女子大学名誉教授。
紫式部学術賞・日本庭園学会賞受賞。

著書◉
『紫の上造型論』(新典社、1988年6月)、『「わが身をたどる表現」論 源氏物語の膠着語世界』 (武蔵野書院、1995年11月)、『狭衣の恋』(翰林書房、1999年11月)、『王朝摂関期の養女たち』(翰林書房、2004年11月)、『蜻蛉日記の養女迎え』(新典社、2006年9月)、『王朝の恋と別れ 言葉と物の情愛表現』(森話社、2014年11月)、『庭園思想と平安文学 寝殿造から』(花鳥社、2018年11月)、『図鑑 モノから読み解く王朝絵巻 第一巻 源氏物語絵巻の世界』(花鳥社、2024年4月)、『図鑑 モノから読み解く王朝絵巻 第二巻 寝殿造の仕組みと宮中の行事』(花鳥社、2024年6月)など。
共著◉
『伊勢集全注釈』(角川書店、2016年11月)、『拾遺和歌集』(岩波文庫、2021年12月)など。
編著◉
『王朝文学と建築・庭園』(平安文学と隣接諸学1、竹林舎、2007年5月)、『現代文化と源氏物語』(講座源氏物語研究 第九巻、おうふう、2007年10月)、『王朝人の婚姻と信仰』(森話社、2010年5月) 、『平安大事典 図解でわかる『源氏物語』の世界』(朝日新聞出版、2015年4月)など。
共編著◉
『源氏物語の鑑賞と基礎知識 空蝉』(至文堂、2001年6月)、『王朝文学と交通』(平安文学と隣接諸学7、竹林舎、2009年5月)、『王朝文学文化歴史大事典』(笠間書院、2011年11月)、『王朝びとの生活誌 『源氏物語』の時代と心性』(叢書・文化学の越境19、森話社、2013年3月)、『三省堂全訳読解古語辞典 第五版』(三省堂、2017年10月)、『狭衣物語の新世界』(知の遺産シリーズ6、武蔵野書院、2019年2月)など。


髙橋夕香(たかはし ゆうか)

日本画家。 個展を中心に活動し、国内外でコンペティション入賞。 近年では『三省堂国語辞典』『大辞林 第四版』の挿絵も手がける。

はじめに

Ⅰ 祭礼・参籠・信仰の旅を読み解く

平安京の祭礼

1『年中行事絵巻』巻十二
  稲荷祭の神輿還幸
2『年中行事絵巻』巻十六
  賀茂祭の奉幣使の行列
3『年中行事絵巻』巻九
  祇園御霊会の田楽
4『年中行事絵巻』巻九
  祇園御霊会の神輿還幸

寺院参籠

5『信貴山縁起』尼君の巻
  尼君の東大寺大仏殿参籠
6『石山寺縁起』巻四
  行尊僧正の石山寺参籠

信仰の旅

7『因幡堂縁起』第五段
  薬師如来像の飛来
8『粉河寺縁起』第二話
  讃良長者一家の粉河への旅立ち
9『粉河寺縁起』第二話
  讃良長者一家の旅荷
10『石山寺縁起』巻一
  宇多法皇の石山寺詣の仮屋
11『西行物語絵巻』萬野美術館本第四段
  千里の浜を行く熊野詣の人々
12『一遍上人絵伝』巻二
  一遍の弟子聖戒との別れ
13『一遍上人絵伝』巻六
  鯵坂入道の入水往生

II 庶民の暮らしと遊びを読み解く

庶民の家と生活

14『信貴山縁起』山崎長者の巻
  山崎長者の家の奥向きと飛鉢
15『信貴山縁起』尼君の巻
  菜摘み・水汲み・洗濯・糸紡ぎ
16『粉河寺縁起』第一話
  猟師の家の食事
17『粉河寺縁起』第二話
  讃良長者の家の門前警備
18『伊勢新名所絵歌合』河辺の里
  妻問と待つ女の化粧
19『西行物語絵巻』徳川美術館本第三段
  洗濯・物干し・薪割
20『融通念仏縁起』下巻
  牛飼童の妻の出産と水汲み・洗濯
21『病草紙』文化庁本
  歯痛の男の食膳 庶民の遊び
22『年中行事絵巻』巻十六
  毬杖
23『年中行事絵巻』巻十三
  印地打ち
24『鳥獣人物戯画』丙巻
  耳引き
25『伴大納言絵巻』中巻
  子供の喧嘩

III 絵巻の詞書本文

IV 絵巻解説

V 線描画の制作について……髙橋夕香

あとがき

絵引総索引
事項索引

■「日本経済新聞」読書面「あとがきのあと」(インタビュー記事)に掲載されました(2024年8月17日)。

「「モノは物を言う」平安絵巻の深遠 名前から場面解説」