日本語の文字と表記 
学びとその方法 
尾山慎 著

2022年12月25日発行
定価:2,970円(10%税込)
A5判・並製・336頁
ISBN:978-4-909832-69-6

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内容紹介著者紹介目次

文字論・書記論・表記論の違いをはじめ、日本語分析に必要な基礎理論を体系的に解説。
文字の誕生からSNSでの表記まで、漢字・平仮名・片仮名の歴史と言葉の多様性を紹介。

「この本では、日本語の文字、そしてそれが実際に並べられた表記、またその筆跡、筆致、紙面上の配置など様々な事象について、いかに分析、研究されるかを様々な角度から論じていきます。今日まで蓄積されてきた研究、そしてそれらを承けて今後どのように展開されていくかということについて広く取り上げて、紹介したり、論説したりしていきます。進めるにあたっては、ただただすでに完成された研究方法に沿って紹介していくのではなく、研究方法、アプローチそれ自体をも、再検討しながら、時に新たに考案しつつ進めていきます。」——「はじめに」より

尾山 慎(おやま しん)
2006年 大阪市立大学大学院博士後期課程修了 博士(文学)
大阪市立大学特任講師、京都大学非常勤講師などを経て、2013年より奈良女子大学准教授(現在に至る)
真言宗御室派寳珠院住職

著作
『二合仮名の研究』(和泉書院、2019)、『上代日本語表記論の構想』(花鳥社、2021)

2007年 新村出賞研究奨励賞受賞
2008年 萬葉学会奨励賞受賞
2014年 漢検漢字文化研究奨励賞・佳作

はじめに

第一章 日本語の文字表記の〝多様さ〟とその歴史的要因

Ⅰ 日本語の文字表記の実情と歴史

1 現代日本語表記の特徴
2 日常生活と言葉、文字表記
3 歴史的研究にあたって
4 中国語との交渉

Ⅱ 漢文訓読と日本語

1 「訓読」とは
  [翻訳と訓読/訓読と漢字]
2 漢文訓読の現状・過去とその価値
3 訓読とメソッド化
4 術語を巡る問題——「訓読」とは

コラム1 論理的整合性に安心したい

第二章 文字論・表記論・書記論へ

Ⅰ 文字・表記・書記の違いと研究する視点

1 文字とは
2 文字論と表記論・書記論
3 社会における文字の始まりとその役割
4 表記論・書記論
5 表記論のある一例
6 読み手・書き手・分析者
  [読み手と書き手/分析する人]

Ⅱ 文字の種類と記号論

1 表語と表意
  [表語文字か、表意文字か/術語「表語文字」の限界]
2 古代エジプト人と文字——記号の記号か、あるいは〝真実〟か
3 記号論とデザイン性を巡る評価のズレ

Ⅲ 字の形を定義する

1 字形と字体を巡る諸問題——書体・書風・フォント
  [字形・字体の一般的な概念規定/学習による紐付け/書体とは/漢字の五体とフォント]

コラム2 『声の文化と文字の文化』(W・J・オング)

第三章 言語学的なアプローチと方法論

Ⅰ 言葉の基本的な特徴と文字・表記

1 言葉の働きとその研究
  [言葉とは、対象のパッキング/「近代言語学の父」と一般言語学/文字は即ち言葉……か?——字音・字義・字訓/意味とは/文字とシニフィアン・シニフィエ]

Ⅱ 個別と一般、歴史と現在

1 抽象と具象
  [抽象と具象という認知の両輪/ラングとパロール/あらためて、共時態論と通時態論/通時的研究に立ちはだかる壁]

コラム3 科学の申し子達と宗教リテラシー

第四章 漢字の使い道と日本語、そして社会

Ⅰ 漢字の始まりとその特性

1 古代中国の漢字事情
2 日本の漢字の使用実態と諸問題
  [漢字の伝統的分類/表語の用法/表音の用法/表意の用法/表形の用法]
3 喚起性の強さ——二次的表語性

Ⅱ 社会における文字・表記とその実態

1 社会と文字・表記
  [社会との関係性/日本社会の変化と文字表記/現代日本社会と文字表記/常用漢字の概要/義務教育と漢字/明日から漢字をやめるとしたら/漢字に頼っていること、漢字に縛られていること]
2 印刷と文字の社会性
  [手書き反復練習の是非/日本における印刷の歴史/規範と印刷]

コラム4 中島敦『文字禍』

第五章 仮名のはなし

Ⅰ 「仮名」の成立とその定義

1 「仮名」とは
  [漢字の一用法かそうでないか/現代の分析と、〝当時〟の把握/「仮名」が抱える様々なこと/平仮名・片仮名の定義]
2 〝セット〟としての認識
  [古典文学作品という手がかり/草仮名/文字セットとしての成立]

Ⅱ 万葉仮名

1 万葉仮名の由来
2 万葉仮名解読
3 古代の音韻と万葉仮名
4 万葉仮名解読——引き続き
5 実に多彩な漢字の使い方
6 万葉仮名、平仮名、片仮名の変化を巡る議論
7 文字表記と文章文体の関係
  [表記体という概念/仮名のセットと日本語の文章/奈良時代の万葉仮名セット意識]

コラム5 不立文字

Ⅲ 平仮名・片仮名、そして仮名遣い

1 平仮名の歴史と役割概観
  [平仮名の〝成立論〟/鍵は九世紀だが/『土左日記』の平仮名/平仮名が用いられる媒体]
2 片仮名の歴史概観
  [〝仮名を作った人〟/片仮名の出来方と機能/『方丈記』の片仮名]
3 仮名遣いのはなし
  [現代仮名遣い/仮名遣いという術語自体のゆれ]

コラム6 文字の聖性——梵字の宇宙

第六章 SNSメディアにみる通俗的な文字表記

Ⅰ 新しいメディアと位相

1 「打つ」と「書く」
2 メディアと文字・表記
3 小文字表記の実態
  [小文字表記の読み取られ方/小文字表記——「機能」と、書く理由/「位相表記」として/こういった通俗的表記の展望]

Ⅱ 現代日本語文字表記の新たな相棒

1 絵文字の世界——現代にリバイバルか
  [古代の絵文字/ピクトグラムと文字の違い/対応する言葉の単位/絵文字と顔文字/絵文字の機能分類/絵文字の現状と未来/絵文字の未来、その最新の事情(二〇二一)]
2 (笑)の世界
  [その起源/(笑)の影響範囲/(笑)の機能ふたつ/(笑)の機能の、さらにもうひとつ/wwwの便利さ]

コラム7 文化・文明と相対的な評価

終章 日本語文字表記論の未来

1 文字表記論研究の未来のために、良著を読む
2 実存主義と構造主義そして言語・文字表記研究
  [実存主義と構造主義とは/両方の目をもつ/それぞれの限界点/実存から構造の発見、そして構造の組み換え]
3 構造主義的、理論的なアプローチ
  [個々の意思や指向と構造主義的な考え方/文字表記論の構造性]
4 通時論と共時論のそれぞれの限界
5 目的論的研究との向き合い方
  [目的論とは/目的論と自然科学/「神の所業」と科学]
6 研究の目的とどう位置づけられるかの模索
7 術語の再検討は、常に〝継続審議事項〟
8 科学の〝目指すところ〟と〝私〟を研究へと向かわせるもの

おわりに
主要参考文献

主要語句説明

音韻▼音声▼共時態(論)▼字形▼字体▼シニフィアン▼シニフィエ▼書記▼書体▼書風▼通時態(論)▼パロール▼表意▼表音文字とその用法▼表記▼表記体▼表形用法▼表語文字とその用法▼フォント▼文字▼ラング