山上憶良 
生きる意味を問い続けた歌人の表現思想 
多田 一臣 著

2023年12月15日発行
定価:4,950円(10%税込)
四六判・上製・336頁
ISBN:978-4-909832-83-2

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内容紹介著者紹介目次

異質な個性を和歌表現史の中に位置づける。

理念や思想を詠み込む歌いぶりが和歌史の中できわめて異例だった憶良。
その生涯をたどりつつ、和歌のみならず散文世界の意義についても読み解く。
いま、なぜ憶良を読むのか——生・老・病・死をめぐって、憶良が積み重ねた思索は、現代においても大きな意味をもつに違いない。

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「本書では、以下、憶良の作品を一つ一つ取り上げ、その作品世界を丹念に分析することで、憶良が選び取った方法を検証していく。和歌のみならず、憶良が新たに選び取った散文世界の意義についても詳しく論じていくつもりである。それによって、「和歌史にきつりつする孤峰」と評したことの所以ゆえんを明らかにしたいと思っている。」
(「序 いま、なぜ憶良を読むのか」より)

多田 一臣(ただ かずおみ)

1975年、東京大学大学院修士課程修了。
千葉大学助教授、東京大学教授、二松学舎大学教授等を歴任。
現在、東京大学名誉教授、博士(文学)。
著書に『万葉歌の表現』(明治書院)、『大伴家持』(至文堂)、『日本霊異記』(全三巻、ちくま学芸文庫)、『古代文学表現史論』(東京大学出版会)、『額田王論』(若草書房)、『万葉集全解』(全七巻、筑摩書房)、『古代文学の世界像』(岩波書店)、『『古事記』と『万葉集』』(放送大学教育振興会)、『柿本人麻呂』(人物叢書、吉川弘文館)、『高橋虫麻呂と山部赤人』(笠間書院)、『古事記私解Ⅰ・Ⅱ』(花鳥社)、『万葉樵話』(筑摩書房)など。
編著書に『万葉集ハンドブック』(三省堂)、『万葉への文学史 万葉からの文学史』(笠間書院)、『万葉語誌』(筑摩書房)など。

序 いま、なぜ憶良を読むのか
1 奈良時代前期の和歌の状況と大伴旅人
2 山上憶良の前半生——筑前守となるまで
3 日本挽歌——旅人に贈られた亡妻挽歌
4 嘉摩郡三部作——この世に生きることとは
  Ⅰ 惑へる情を反さしむる歌
  Ⅱ 子らを思ふ歌
  Ⅲ 世間の住まり難きを哀しびたる歌
5 鎮懐石の歌
6 大伴旅人の松浦郡巡行をめぐって
7 七夕歌十二首と秋の七草の歌
  Ⅰ 七夕歌十二首
  Ⅱ 秋の七草の歌
8 旅人との別離
9 大伴熊凝の歌——不慮の死を遂げた一青年への挽歌
10 志賀の白水郎の歌——海難死した荒雄の悲劇
11 貧窮問答歌——思想を抱え込む歌
12 好去好来歌——遣唐使の無事を祈る
13 沈痾自哀文——病の現実といかに向き合うか
14 俗道悲嘆の詩——魂の悲痛な叫び
15 老身重病経年辛苦、及児らを思ふ歌
16 辞世の歌——士たることの自負
17 古日に恋ひたる歌——憶良の到達点

あとがき