軍記物語講座 第二巻 
無常の鐘声 平家物語 
松尾葦江 編

2020年7月30日発行
定価:7,700円(10%税込)
A5判・上製・306頁
ISBN:978-4-909832-22-1

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内容紹介編者・執筆者紹介目次

史実か否か、という以上にどう語られているか。

文学のみならず、歴史・芸術・言語等の周辺分野からのアプローチも交えた、最新の研究成果を提示。この20年のうちに大きく変化してきた軍記物語研究の現在と、今後を見据えた文学本来の課題を照らしだす。

全4巻のシリーズ完結!

シリーズ一覧
第一巻 武者の世が始まる
第二巻 無常の鐘声—平家物語
第三巻 平和の世は来るか—太平記
第四巻 乱世を語りつぐ
●全4巻、完結

松尾 葦江(まつお あしえ)*編者
1943(昭和18)年神奈川県生まれ。博士(文学)。
専門は日本中世文学、特に軍記物語。
主な著書:『平家物語論究』(明治書院、1985年)、『軍記物語論究』(若草書房、1996年)、『軍記物語原論』(笠間書院、2008年)、「長門切からわかること—平家物語成立論・諸本論の新展開—」(『國學院雑誌』第118巻第5号、2017年5月)、「『平家物語』の表現—叙事に泣くということ—」(『和歌文学研究』第118号、2019年6月)など。


佐倉 由泰(さくら よしやす) 東北大学教授
著書・論文:『軍記物語の機構』(汲古書院、2011 年)、「軍記物語の表現史を構想するために―真名表記テキストに着目して―」(『文学』第16 巻第2 号、岩波書店、2015 年3 月)、「中世の列叙―世界を表象する知の祝祭―」(『文学・語学』第222 号、2018 年5 月)など。

佐伯 真一(さえき しんいち) 青山学院大学教授
著書・論文:『平家物語大事典』(共編、東京書籍、2010 年)、『伝承文学注釈叢書1 予章記』(共著、三弥井書店、2016 年)、『「武国」日本―自国意識とその罠―』(平凡社、2018 年)など。

久保 勇(くぼ いさむ) 千葉大学准教授
著書・論文:『校訂 延慶本平家物語(十一)』(共編、汲古書院、2009 年)、「十三世紀末の紀州地域と「伝承」―延慶本『平家物語』・湯浅氏・無本覚心」(『根来寺と延慶本『平家物語』・紀州地域の寺院空間と書物・言説』アジア遊学211、勉誠出版、2017 年)、「『将門記』の流布をめぐって―植松有信模刻本板行の経緯と影響―」(『武蔵野文学』67 号、2019 年12 月)など。

平藤 幸(ひらふじ さち) 文部科学省教科書調査官
著書・論文:『平家物語 覚一本 全』(共編、武蔵野書院、2013 年)、「「八葉の大臣」をめぐって―萩明倫館旧蔵長門本『平家物語』本文の読みの可能性―」(『日本文学』第66 巻第10 号、2017 年10 月)、「萩明倫館旧蔵長門本『平家物語』首両巻をめぐって」(関西軍記物語研究会編『軍記物語の窓』第五集、和泉書院、2017 年)など。

高木 浩明(たかぎ ひろあき) 近畿大学非常勤講師
著書・論文:『中院通勝真筆本『つれづれ私抄』―本文と校異―』(新典社、2012 年)、「古活字版『源平盛衰記』の諸版について」(松尾葦江編『文化現象としての源平盛衰記』、笠間書院、2015 年)、「本文は刊行者によって作られる―要法寺版『沙石集』を糸口にして―」(『中世文学』62 号、2017 年)など。

櫻井 陽子(さくらい ようこ) 駒澤大学教授
著書・論文: 『平家物語の形成と受容』(汲古書院、2001 年)、『平家物語大事典』(共編、東京書籍、2010 年)、『『平家物語』本文考』(汲古書院、2013 年)など。

原田 敦史(はらだ あつし) 共立女子大学教授
著書・論文:『平家物語の文学史』(東京大学出版会、2012 年)、「平重衡」(『日本文学』第68 巻第7 号、2019 年7 月)、「『平家物語』の「駆武者」」(『日本文学研究ジャーナル』第11 号、2019 年9 月)など。

牧野 淳司(まきの あつし) 明治大学教授
著書・論文:「唱導資料から見る堂舎建立と造仏の営み」(『説話文学研究』第53 号、2018 年8 月)、「「御法」の物語としての源氏物語―源氏供養の発生と結縁の心性―」(『古代学研究所紀要』〈明治大学古代学研究所〉27 号、2019 年2 月)、「『平家物語』と唱導文化との関わりについての綜合的研究―後白河法皇をめぐる唱導の観点から―」(『明治大学人文科学研究所紀要』第84 冊、2019 年3 月)など。

谷 知子(たに ともこ) フェリス女学院大学教授
著書・論文:『中世文学とその時代』(笠間書院、2004 年)、『和歌文学の基礎知識』(KADOKAWA〈角川学芸出版〉、2006 年)、『百人一首(全)』(KADOKAWA〈角川学芸出版〉、2010 年)など。

源 健一郎(みなもと けんいちろう) 四天王寺大学教授
著書・論文:「『平家物語』諸本における〈熊野新宮合戦〉 —記事構成の方法について―」 (関西軍記物語研究会編『軍記物語の窓』第五集、和泉書院、2017 年)、「〈西行〉と修験者像―『義経記』生成の背景として―」(『日本文学』第67 巻第7 号、2018 年7 月)、「中世伝承世界の〈実朝〉―『吾妻鏡』唐船出帆記事試論―」(『源実朝―虚実を越えて』アジア遊学241、勉誠出版、2019 年)など。

浜畑 圭吾(はまはた けいご) 高野山大学准教授
著書・論文:『平家物語生成考』(思文閣出版、2014 年)、「長門本平家物語の「三鈷投擲説話」―『源平盛衰記』との比較から―」(『古典文藝論叢』1 号、2009 年)、「長門本平家物語の慈念僧正による真済教化説話」(『佛教文学』31 号、2007 年)など。

鈴木 孝庸(すずき たかつね) 新潟大学名誉教授
著書・論文:『平曲と平家物語』(新潟大学人文学部研究叢書2、知泉書館、2007 年)、『平家を語る琵琶法師』(ブックレット新潟大学63、新潟日報事業社、2013 年)、『平家物語 節附語り本』(孫暘と共編、國立臺灣大學圖書館典藏 平家物語 音譜本 第一卷、國立臺灣大學圖書館、2018 年)など。

山中 玲子(やまなか れいこ) 法政大学教授
著書・論文:「軍記文学と芸能・演劇―平家の能をめぐって―」(梶原正昭編『軍記文学とその周縁』汲古書院、2000 年)、「「天女舞」応用の一形態―神と遊女が舞った菩薩の舞―」(小林健二編『中世の芸能と文芸』竹林舎、2012 年)、「〈通盛〉前場のシテ・ツレ登場段をめぐって」、『能楽研究』42 号、2019 年)など。

出口 久徳(でぐち ひさのり) 立教新座中学校・高等学校教諭、立教大学兼任講師
著書・論文:『図説 平家物語』(共著、河出書房新社、2004 年)、『平家物語を知る事典』(共著、東京堂出版、2005 年)、『日本文学の展望を拓く2 絵画・イメージの回廊』(編著、笠間書院、2017 年)など。

伊藤 悦子(いとう えつこ)
著書・論文:『木曽義仲に出会う旅』(新典社、2012 年)、「『平家物語』源頼政最期譚の改編過程―〈木津川系〉から〈宇治川系〉へ―」(『日本文學論究』第77 冊、2018 年3 月)、「『耳川合戦図屏風』と『平治物語絵巻』「六波羅合戦巻」―粉本の視点から―」(『日本文學論究』第79 冊、2020 年3 月)など。

まえがき●佐倉由泰1(さくら よしやす) 東北大学教授 著書・論文:『軍記物語の機構』(汲古書院、2011 年)、「軍記物語の表現史を構想するために―真名表記テキストに着目して―」(『文学』第16 巻第2 号、岩波書店、2015 年3 月)、「中世の列叙―世界を表象する知の祝祭―」(『文学・語学』第222 号、2018 年5 月)など。

平家物語の軌跡●松尾葦江2(まつお あしえ) 1943(昭和18)年神奈川県生まれ。博士(文学)。 専門は日本中世文学、特に軍記物語。 主な著書:『平家物語論究』(明治書院、1985年)、『軍記物語論究』(若草書房、1996年)、『軍記物語原論』(笠間書院、2008年)、「長門切からわかること—平家物語成立論・諸本論の新展開—」(『國學院雑誌』第118巻第5号、2017年5月)、「『平家物語』の表現—叙事に泣くということ—」(『和歌文学研究』第118号、2019年6月)など。
一 成立年代に関する資料を見直す
二 成立後の展開をたどる
三 来たるべき平家物語論のために

『平家物語』古態論と延慶本●佐伯真一3(さえき しんいち) 青山学院大学教授 著書・論文:『平家物語大事典』(共編、東京書籍、2010 年)、『伝承文学注釈叢書1 予章記』(共著、三弥井書店、2016 年)、『「武国」日本―自国意識とその罠―』(平凡社、2018 年)など。
一 古態論とは何か
二 古態論と延慶本
三 古態論と絶対年代
四 おわりに

延慶本平家物語の伝来と流布●久保勇4(くぼ いさむ) 千葉大学准教授 著書・論文:『校訂 延慶本平家物語(十一)』(共編、汲古書院、2009 年)、「十三世紀末の紀州地域と「伝承」―延慶本『平家物語』・湯浅氏・無本覚心」(『根来寺と延慶本『平家物語』・紀州地域の寺院空間と書物・言説』アジア遊学211、勉誠出版、2017 年)、「『将門記』の流布をめぐって―植松有信模刻本板行の経緯と影響―」(『武蔵野文学』67 号、2019 年12 月)など。
一 はじめに―現存延慶本をめぐって―
二 近現代の延慶本―応永本の流転と発見―
三 近世の延慶本―応永本の狩谷棭齋蔵を中心に―
四 中世の延慶本―応永年間紀州根来寺内での流布―

平家切から分かること―新出断簡紹介を通して 付長門切一覧―●平藤幸5(ひらふじ さち) 文部科学省教科書調査官 著書・論文:『平家物語 覚一本 全』(共編、武蔵野書院、2013 年)、「「八葉の大臣」をめぐって―萩明倫館旧蔵長門本『平家物語』本文の読みの可能性―」(『日本文学』第66 巻第10 号、2017 年10 月)、「萩明倫館旧蔵長門本『平家物語』首両巻をめぐって」(関西軍記物語研究会編『軍記物語の窓』第五集、和泉書院、2017 年)など。
一 はじめに
二 長門切研究の現在地と展望
三 新出長門切の紹介とその疑問点
四 おわりに

『源平盛衰記』無刊記整版の「版」を考える●高木浩明6(たかぎ ひろあき) 近畿大学非常勤講師 著書・論文:『中院通勝真筆本『つれづれ私抄』―本文と校異―』(新典社、2012 年)、「古活字版『源平盛衰記』の諸版について」(松尾葦江編『文化現象としての源平盛衰記』、笠間書院、2015 年)、「本文は刊行者によって作られる―要法寺版『沙石集』を糸口にして―」(『中世文学』62 号、2017 年)など。
一 はじめに
二 無刊記整版の「版」はいくつか
三 敦賀屋久兵衛奥付本
四 新出の万治二年林和泉掾板行本
五 瀬尾源兵衛奥付本
六 寛政八年茨城多左衛門方正刊本ほか
七 乱版
八 おわりに

混態─発生と展開─●櫻井陽子7(さくらい ようこ) 駒澤大学教授 著書・論文: 『平家物語の形成と受容』(汲古書院、2001 年)、『平家物語大事典』(共編、東京書籍、2010 年)、『『平家物語』本文考』(汲古書院、2013 年)など。
一 はじめに
二 混態の発生
三 覚一本の場合―校合から混態へ―
四 延慶本の場合─改編の一手法としての混態─
五 他の軍記物語
六 おわりに

語り本系平家物語の成立―表現がえらばれたとき―●原田敦史8(はらだ あつし) 共立女子大学教授 著書・論文:『平家物語の文学史』(東京大学出版会、2012 年)、「平重衡」(『日本文学』第68 巻第7 号、2019 年7 月)、「『平家物語』の「駆武者」」(『日本文学研究ジャーナル』第11 号、2019 年9 月)など。
一 建礼門院関連記事から
二 延慶本は何を描いたか(一)
三 延慶本は何を描いたか(二)
四 語り本の世界
五 おわりに

後白河法皇と建礼門院の「鎮魂」―寺院における唱導から見る『平家物語』の「大原御幸」―●牧野淳司9(まきの あつし) 明治大学教授 著書・論文:「唱導資料から見る堂舎建立と造仏の営み」(『説話文学研究』第53 号、2018 年8 月)、「「御法」の物語としての源氏物語―源氏供養の発生と結縁の心性―」(『古代学研究所紀要』〈明治大学古代学研究所〉27 号、2019 年2 月)、「『平家物語』と唱導文化との関わりについての綜合的研究―後白河法皇をめぐる唱導の観点から―」(『明治大学人文科学研究所紀要』第84 冊、2019 年3 月)など。 一 はじめに
二 後白河法皇に近侍する唱導僧の立場
三 善知識としての後白河法皇
四 後白河法皇への説法
五 おわりに

九条兼実と崇徳院・高倉院・安徳天皇―徳政と鎮魂―●谷知子10(たに ともこ) フェリス女学院大学教授 著書・論文:『中世文学とその時代』(笠間書院、2004 年)、『和歌文学の基礎知識』(KADOKAWA〈角川学芸出版〉、2006 年)、『百人一首(全)』(KADOKAWA〈角川学芸出版〉、2010 年)など。
一 安元の大火はなぜ起きたか
二 乱世到来―崇徳院の鎮魂か徳政か―
三 平家滅亡―安徳天皇鎮魂へ
四 兼実と高倉天皇
五 摂関家の役割と和歌、そして『平家物語』

『平家物語』と登蓮―数寄・聖・修験―●源健一郎11(みなもと けんいちろう) 四天王寺大学教授 著書・論文:「『平家物語』諸本における〈熊野新宮合戦〉 —記事構成の方法について―」 (関西軍記物語研究会編『軍記物語の窓』第五集、和泉書院、2017 年)、「〈西行〉と修験者像―『義経記』生成の背景として―」(『日本文学』第67 巻第7 号、2018 年7 月)、「中世伝承世界の〈実朝〉―『吾妻鏡』唐船出帆記事試論―」(『源実朝―虚実を越えて』アジア遊学241、勉誠出版、2019 年)など。
一 はじめに
二 登蓮の実像
三 〈登蓮〉伝承の「種」
四 〈登蓮〉伝承の展開と延慶本の〈登蓮〉
五 おわりに

長門本平家物語の成立と伝来環境●浜畑圭吾12(はまはた けいご) 高野山大学准教授 著書・論文:『平家物語生成考』(思文閣出版、2014 年)、「長門本平家物語の「三鈷投擲説話」―『源平盛衰記』との比較から―」(『古典文藝論叢』1 号、2009 年)、「長門本平家物語の慈念僧正による真済教化説話」(『佛教文学』31 号、2007 年)など。
一 はじめに
二 長門本の成立
三 長門本と大内氏文化圏
四 おわりに

平家語り―声による平家物語の解釈と表現―●鈴木孝庸13(すずき たかつね) 新潟大学名誉教授 著書・論文:『平曲と平家物語』(新潟大学人文学部研究叢書2、知泉書館、2007 年)、『平家を語る琵琶法師』(ブックレット新潟大学63、新潟日報事業社、2013 年)、『平家物語 節附語り本』(孫暘と共編、國立臺灣大學圖書館典藏 平家物語 音譜本 第一卷、國立臺灣大學圖書館、2018 年)など。
一 平曲の骨格
二 平曲一句一句のとらえ方
三 一句一句のまとまりと〈語り〉の基本―その一―
四 一句一句のまとまりと〈語り〉の基本―その二―
五 平曲・平家音楽の視覚的紹介(表示の工夫)
六 おわりに

修羅能以前の「平家の能」―〈経盛〉の再検討を通して―●山中玲子14(やまなか れいこ) 法政大学教授 著書・論文:「軍記文学と芸能・演劇―平家の能をめぐって―」(梶原正昭編『軍記文学とその周縁』汲古書院、2000 年)、「「天女舞」応用の一形態―神と遊女が舞った菩薩の舞―」(小林健二編『中世の芸能と文芸』竹林舎、2012 年)、「〈通盛〉前場のシテ・ツレ登場段をめぐって」、『能楽研究』42 号、2019 年)など。
一 はじめに
二 平家諸本との関係
三 世阿弥の修羅能と「古修羅」
四 「少将の能」と「常盛の能」
五 〈経盛〉の再検討
六 おわりに

平家物語絵研究の現在と今後―明暦二年版『平家物語』から考える―●出口久徳15(でぐち ひさのり) 立教新座中学校・高等学校教諭、立教大学兼任講師 著書・論文:『図説 平家物語』(共著、河出書房新社、2004 年)、『平家物語を知る事典』(共著、東京堂出版、2005 年)、『日本文学の展望を拓く2 絵画・イメージの回廊』(編著、笠間書院、2017 年)など。
一 平家物語絵研究の現在
二 明暦版制作の文化環境
三 明暦版の表現Ⅰ―移動場面をめぐって―
四 明暦版の表現Ⅱ―「めくる」行為(「展開」と「対比」)を中心に―
五 明暦版研究、平家物語絵研究の今後

『源平盛衰記』国内地名索引●伊藤悦子16(いとう えつこ) 著書・論文:『木曽義仲に出会う旅』(新典社、2012 年)、「『平家物語』源頼政最期譚の改編過程―〈木津川系〉から〈宇治川系〉へ―」(『日本文學論究』第77 冊、2018 年3 月)、「『耳川合戦図屏風』と『平治物語絵巻』「六波羅合戦巻」―粉本の視点から―」(『日本文學論究』第79 冊、2020 年3 月)など。

平家物語諸本・伝本の分類●櫻井陽子

あとがき●松尾葦江
執筆者紹介

付録「しおり」
歌人としての平家一門●中村文(Web連載「軍記物語講座」によせて(11)を再録)
長門本『平家物語』研究小史―その成立をめぐって―●浜畑圭吾(Web連載「軍記物語講座」によせて(12)を再録)
後嵯峨院時代の和歌木村尚志(Web連載「軍記物語講座」によせて(13)を再録)