軍記物語講座 第三巻 
平和の世は来るか 太平記 
松尾葦江 編

2019年10月30日発行
定価:7,700円(10%税込)*在庫僅少
A5判・上製・292頁
ISBN:978-4-909832-23-8

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内容紹介編者・執筆者紹介目次

執着と虚無の張りつめた軍記物語の世界へ。

文学のみならず、歴史・芸術・言語等の周辺分野からのアプローチも交えた、最新の研究成果を提示。この20年のうちに大きく変化してきた軍記物語研究の現在と、今後を見据えた文学本来の課題を照らしだす。

シリーズ一覧
第一巻 武者の世が始まる
第二巻 無常の鐘声—平家物語
第三巻 平和の世は来るか—太平記
第四巻 乱世を語りつぐ
●全4巻、完結

松尾 葦江(まつお あしえ)*編者
1943(昭和18)年神奈川県生まれ。博士(文学)。
専門は日本中世文学、特に軍記物語。
主な著書:『平家物語論究』(明治書院、1985年)、『軍記物語論究』(若草書房、1996年)、『軍記物語原論』(笠間書院、2008年)、『太平記 下』(日本の文学古典編、ほるぷ出版、1986年)など。


井上 泰至(いのうえ やすし) 防衛大学校教授
著書・論文:『秀吉の虚像と実像』(共編著、笠間書院、2016年)、『武家義理物語』(共著、三弥井書店、2018年)、『関ケ原合戦を読む:慶長軍記翻刻・解説』(共編著、勉誠出版、2018年)など。

長坂 成行(ながさか しげゆき) 奈良大学名誉教授
著書・論文:『伝存太平記写本総覧』(和泉書院、2008年)、『穂久邇文庫蔵 太平記〔竹中本〕と研究(下)』(未刊国文資料刊行会、2010年)、『篠屋宗礀とその周縁 近世初頭・京洛の儒生』(汲古書院、2017年)など。

和田 琢磨(わだ たくま) 早稲田大学教授
著書・論文:『太平記 生成と表現世界』(新典社、2015年)、「乱世を彩る独断 『太平記』の天皇たち」(『東洋通信』53巻6号、2017年2月)、「『大館持房行状』に見る五山僧の『太平記』受容 『太平記』を利用した家伝の作成」(『季刊 悠久』151号、2017年11月)など。

小秋元 段(こあきもと だん) 法政大学教授
著書・論文:「『源平盛衰記』と『太平記』 説話引用のあり方をめぐって」(松尾葦江編『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院、2015年)、「神田本『太平記』の表記に関する覚書 片仮名・平仮名混用と濁点使用を中心に」(『太平記』国際研究集会編『『太平記』をとらえる』第三巻、笠間書院、2016年)、『増補太平記と古活字版の時代』(新典社、2018年)など。

森田 貴之(もりた たかゆき) 南山大学准教授
著書・論文:『日本人と中国故事 変奏する知の世界』(共編、勉誠出版、2018年)、「『太平記』と元詩 成立環境の一隅」(『国語国文』76巻2号、2007年2月)、「『八幡愚童訓』甲本漢籍利用法粗描 武内宿禰と北条氏に触れつつ」(『国語国文』86巻4号、2017年4月)など。

北村 昌幸(きたむら まさゆき) 関西学院大学教授
著書・論文:『太平記世界の形象』(塙書房、2010年)、「『太平記』の引歌表現とその出典」(『太平記』国際研究集会編『『太平記』をとらえる』第一巻、笠間書院、2014年)、「いくさの舞台と叙景歌表現」(『中世文学』63号、2018年6月)など。

君嶋 亜紀(きみしま あき) 大妻女子大学准教授
著書・論文:『新葉和歌集』(和歌文学大系44、共著、明治書院、2014年)、「後醍醐天皇と雲居の桜 『新葉集』の撰集意図を探る」(『国語と国文学』84巻7号、2007年7月)、「『新葉集』の住吉歌群」(『国語と国文学』95巻1号、2018年1月)など。

伊藤 伸江(いとう のぶえ) 愛知県立大学教授
著書・論文:『中世和歌連歌の研究』(笠間書院、2002年)、『心敬連歌 訳注と研究』(共著、笠間書院、2015年)、「心敬と慈円和歌 その受容と変奏」(『文学・語学』207号、2013年)など。

吉田 永弘(よしだ ながひろ) 国学院大学教授
著書・論文:『転換する日本語文法』(和泉書院、2019年)、『日本語文法史研究 4』(共編、ひつじ書房、2018年)、「文法が分かると何が分かるか」(松尾葦江編『ともに読む古典中世文学編』笠間書院、2017年)など。

小助川 元太(こすけがわ がんた) 愛媛大学教授
著書・論文:『行誉編『壒嚢鈔』の研究』(三弥井書店、2006年)、『源平盛衰記年表』(共著、三弥井書店、2015年)、「乱世における百科事典と文学 中世後期の武士の教養」(日下力監修、鈴木彰・三澤裕子編『いくさと物語の中世』、汲古書院、2015年)など。

山田 尚子(やまだ なおこ) 成城大学准教授
著書・論文:『中国故事受容論考 古代中世日本における継承と展開』(勉誠出版、2009年)、『重層と連関 続中国故事受容論考』(勉誠出版、2016年)、「西王母譚の展開 『唐物語』第十六話をめぐって」(『慶應義塾中国文学会報』2号、2018年3月)など。

今井 正之助(いまい しょうのすけ) 愛知教育大学名誉教授
著書・論文:「永和本『太平記』の復権」(『國學院雑誌』114巻11号、2013年11月)、「永和本『太平記』考」(愛知教育大学『日本文化論叢』22号、2014年3月)、「〝やりきれない〟話 高師泰の悪行とその被害者」(松尾葦江編『ともに読む古典 中世文学編』笠間書院、2017年)など。

黒石 陽子(くろいし ようこ) 東京学芸大学教授
著書・論文:『近松以後の人形浄瑠璃』(岩田書院、2007年)、『十七世紀の文学』近世文学史研究一(共著、ぺりかん社、2017年)、「『菅原伝授手習鑑』三段目「車曳」考 松王丸人物解釈の変容」(『国語と国文学』94巻8号、2017年8月)など。

呉座 勇一(ござ ゆういち) 国際日本文化研究センター助教
著書・論文:『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中央公論新社、2016年)、「永享九年の『大乱』 関東永享の乱の始期をめぐって」(植田真平編『足利持氏』シリーズ・中世関東武士の研究第二〇巻、戎光祥出版、2016年、初出2013年)、「足利安王・春王の日光山逃避伝説の生成過程」(倉本一宏編『説話研究を拓く 説話文学と歴史史料の間に』思文閣出版、2019年)など。

李 章姫(い じゃんひ) 法政大学大学院院生(博士後期課程)
著書・論文:「天正本『太平記』巻二十六「大稲妻天狗未来記事」の視点」(『軍記と語り物』52号、2016年6月)、「天正本『太平記』巻二十七「諸卿意見被下綸旨事」における漢楚合戦記事をめぐって」(『日本文學誌要』95号、2017年3月)、「天正本『太平記』記事構成と霊剣」(『法政大学大学院紀要』82号、2019年6月)など。

まえがき●小秋元段

忠義の行方―楠木の「刀」―●井上泰至1(いのうえ やすし) 防衛大学校教授 著書・論文:『秀吉の虚像と実像』(共編著、笠間書院、2016年)、『武家義理物語』(共著、三弥井書店、2018年)、『関ケ原合戦を読む:慶長軍記翻刻・解説』(共編著、勉誠出版、2018年)など。
一 「復古」国民国家のイデオロギーの象徴
二 なぜ『太平記』は江戸時代の〈歴史〉の典範なのか?
三 転生する「存念」―塩谷判官・楠木正成・赤穂義士―
四 「忠臣」から「尽忠報国の士」へ―幕末期の転移―

『太平記』諸本研究の軌跡と課題―一九九〇年代以降を中心に―●長坂成行2(ながさか しげゆき) 奈良大学名誉教授 著書・論文:『伝存太平記写本総覧』(和泉書院、2008年)、『穂久邇文庫蔵 太平記〔竹中本〕と研究(下)』(未刊国文資料刊行会、2010年)、『篠屋宗礀とその周縁 近世初頭・京洛の儒生』(汲古書院、2017年)など。
一 はじめに
二 鈴木登美惠・長谷川端両氏の諸本研究
三 伝本の紹介、および公刊
四 神田本・永和本の再検討
五 乙類本研究の進展
六 天正本の増補記事をめぐって
七 その他の研究―結びにかえて―

『太平記』と武家―天正本と佐々木京極氏の関係を中心に―●和田琢磨3(わだ たくま) 早稲田大学教授 著書・論文:『太平記 生成と表現世界』(新典社、2015年)、「乱世を彩る独断 『太平記』の天皇たち」(『東洋通信』53巻6号、2017年2月)、「『大館持房行状』に見る五山僧の『太平記』受容 『太平記』を利用した家伝の作成」(『季刊 悠久』151号、2017年11月)など。
一 はじめに
二 『太平記』の生成と武家権力
三 天正本と佐々木京極氏の関係
四 鈴木登美惠氏の説を見直す
五 守護大名からの圧力・要求はあったのか
六 おわりに

『太平記』における禅的要素、序説●小秋元段4(こあきもと だん) 法政大学教授 著書・論文:「『源平盛衰記』と『太平記』 説話引用のあり方をめぐって」(松尾葦江編『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院、2015年)、「神田本『太平記』の表記に関する覚書 片仮名・平仮名混用と濁点使用を中心に」(『太平記』国際研究集会編『『太平記』をとらえる』第三巻、笠間書院、2016年)、『増補太平記と古活字版の時代』(新典社、2018年)など。
一 はじめに
二 研究史を振り返る
三 禅に由来する句の引用
四 『太平記』作者と禅宗との距離
五 むすび

『太平記』の禅学、宋学―遺偈と『孟子』と殷周説話と―●森田貴之5(もりた たかゆき) 南山大学准教授 著書・論文:『日本人と中国故事 変奏する知の世界』(共編、勉誠出版、2018年)、「『太平記』と元詩 成立環境の一隅」(『国語国文』76巻2号、2007年2月)、「『八幡愚童訓』甲本漢籍利用法粗描 武内宿禰と北条氏に触れつつ」(『国語国文』86巻4号、2017年4月)など。
一 長崎氏の禅学と宋学
二 『太平記』第一部と遺偈
三 『太平記』の殷周説話と宋学

『太平記』の表現―方法としての和漢混淆文―●北村昌幸6(きたむら まさゆき) 関西学院大学教授 著書・論文:『太平記世界の形象』(塙書房、2010年)、「『太平記』の引歌表現とその出典」(『太平記』国際研究集会編『『太平記』をとらえる』第一巻、笠間書院、2014年)、「いくさの舞台と叙景歌表現」(『中世文学』63号、2018年6月)など。
一 はじめに
二 使い分けられる文体
三 《和》対《漢》の構図
四 《和》と《漢》の融合
五 おわりに

南朝歌壇と『太平記』―『新葉和歌集』を中心に―●君嶋亜紀7(きみしま あき) 大妻女子大学准教授 著書・論文:『新葉和歌集』(和歌文学大系44、共著、明治書院、2014年)、「後醍醐天皇と雲居の桜 『新葉集』の撰集意図を探る」(『国語と国文学』84巻7号、2007年7月)、「『新葉集』の住吉歌群」(『国語と国文学』95巻1号、2018年1月)など。
一 『太平記』と『新葉集』
二 元弘の乱
三 宗良親王の視点
四 吉野炎上
五 おわりに

『太平記』の周辺―連歌表現の広がりと『太平記』―●伊藤伸江8(いとう のぶえ) 愛知県立大学教授 著書・論文:『中世和歌連歌の研究』(笠間書院、2002年)、『心敬連歌 訳注と研究』(共著、笠間書院、2015年)、「心敬と慈円和歌 その受容と変奏」(『文学・語学』207号、2013年)など。
一 はじめに
二 義詮の近江敗走
三 土岐頼康の『菟玖波集』入集句
四 尊氏の勢多渡河
五 救済と佐々木氏頼による『菟玖波集』の付合
六 『菟玖波集』の羇旅連歌
七 おわりに

言語資料としての『太平記』―神田本の語法―●吉田永弘9(よしだ ながひろ) 国学院大学教授 著書・論文:『転換する日本語文法』(和泉書院、2019年)、『日本語文法史研究 4』(共編、ひつじ書房、2018年)、「文法が分かると何が分かるか」(松尾葦江編『ともに読む古典中世文学編』笠間書院、2017年)など。
一 はじめに
二 神田本の補入箇所と天正本
三 太平記の中世語
四 神田本の語法
五 おわりに

類書・注釈書と『太平記』の関係―『壒囊鈔』の『太平記』利用―●小助川元太10(こすけがわ がんた) 愛媛大学教授 著書・論文:『行誉編『壒嚢鈔』の研究』(三弥井書店、2006年)、『源平盛衰記年表』(共著、三弥井書店、2015年)、「乱世における百科事典と文学 中世後期の武士の教養」(日下力監修、鈴木彰・三澤裕子編『いくさと物語の中世』、汲古書院、2015年)など。
一 はじめに
二 『壒嚢鈔』と『太平記』
三 言葉の注釈と書名の明記
四 説話が用いられる文脈
五 おわりに

『太平記』と兵法書─「七書」の受容をめぐって─●山田尚子11(やまだ なおこ) 成城大学准教授 著書・論文:『中国故事受容論考 古代中世日本における継承と展開』(勉誠出版、2009年)、『重層と連関 続中国故事受容論考』(勉誠出版、2016年)、「西王母譚の展開 『唐物語』第十六話をめぐって」(『慶應義塾中国文学会報』2号、2018年3月)など。
一 はじめに
二 『施氏七書講義』について
三 『太平記』における「七書」
四 『六韜』の利用
五 『六韜講義』(施氏注)の利用
六 『六韜講義』と『三略講義』
七 おわりに

『理尽鈔』『難太平記』から見た「青野原合戦」―『太平記』注釈書としての『理尽鈔』の可能性―●今井正之助12(いまい しょうのすけ) 愛知教育大学名誉教授 著書・論文:「永和本『太平記』の復権」(『國學院雑誌』114巻11号、2013年11月)、「永和本『太平記』考」(愛知教育大学『日本文化論叢』22号、2014年3月)、「〝やりきれない〟話 高師泰の悪行とその被害者」(松尾葦江編『ともに読む古典 中世文学編』笠間書院、2017年)など。
一 はじめに
二 土岐頼遠はどこで合流したのか
三 青野原での戦闘はどのようにして可能となったのか
四 五手(五番)に分ける目的は何だったのか
五 今川範国はどこで戦ったのか
六 おわりに

近世演劇と『太平記』―『仮名手本忠臣蔵』成立まで―●黒石陽子13(くろいし ようこ) 東京学芸大学教授 著書・論文:『近松以後の人形浄瑠璃』(岩田書院、2007年)、『十七世紀の文学』近世文学史研究一(共著、ぺりかん社、2017年)、「『菅原伝授手習鑑』三段目「車曳」考 松王丸人物解釈の変容」(『国語と国文学』94巻8号、2017年8月)など。
一 はじめに
二 近松以前の人形浄瑠璃と『太平記』
三 近松作品と『太平記』
四 並木宗輔の登場と『太平記』
五 「塩冶判官讒死事」の取り上げ方と『仮名手本忠臣蔵』

南北朝内乱と『太平記』史観―王権論の視点から―●呉座勇一14(ござ ゆういち) 国際日本文化研究センター助教 著書・論文:『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中央公論新社、2016年)、「永享九年の『大乱』 関東永享の乱の始期をめぐって」(植田真平編『足利持氏』シリーズ・中世関東武士の研究第二〇巻、戎光祥出版、2016年、初出2013年)、「足利安王・春王の日光山逃避伝説の生成過程」(倉本一宏編『説話研究を拓く 説話文学と歴史史料の間に』思文閣出版、2019年)など。
一 はじめに
二 王権の物語としての『平家』・『太平記』
三 鹿ヶ谷の陰謀と正中の変
四 正中の変の実像
五 以仁王と護良親王
六 おわりに

『太平記』西源院本・天正本・流布本記事対照表●李章姫15(い じゃんひ) 法政大学大学院院生(博士後期課程) 著書・論文:「天正本『太平記』巻二十六「大稲妻天狗未来記事」の視点」(『軍記と語り物』52号、2016年6月)、「天正本『太平記』巻二十七「諸卿意見被下綸旨事」における漢楚合戦記事をめぐって」(『日本文學誌要』95号、2017年3月)、「天正本『太平記』記事構成と霊剣」(『法政大学大学院紀要』82号、2019年6月)など。

あとがき●松尾葦江16(まつお あしえ) 1943(昭和18)年神奈川県生まれ。博士(文学)。 専門は日本中世文学、特に軍記物語。 主な著書:『平家物語論究』(明治書院、1985年)、『軍記物語論究』(若草書房、1996年)、『軍記物語原論』(笠間書院、2008年)、『太平記 下』(日本の文学古典編、ほるぷ出版、1986年)など。
執筆者紹介

付録「しおり」
国文学研究が肉体労働であったころ●村上學(Web連載「軍記物語講座」によせて(1)を再録)
『太平記』書写流伝関係未詳人物抄●長坂成行(Web連載「軍記物語講座」によせて(2)を再録)
軍記物語とその絵画化●石川透(Web連載「軍記物語講座」によせて(3)を再録)